読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

政略結婚 高殿円著 角川書店 2017年

 江戸末期・明治大正・昭和、百二十年の間に女性の生き方はこう変わった!

 金沢城で生まれた私の結婚相手はわずか生後半年で決まった。(中略)
 早すぎると思うかも知れないが、当時ではごくごく当たり前のことで、大名の子の結婚はすべて政略結婚、祝言の日まで互いに顔を合わせず、文も交わさぬのが慣習である。
 私の生まれた文化の世とはそういう時代であった。――第一章「てんさいの君」より

 不思議な縁(えにし)でつながる、三つの時代を生き抜いた三人の女性たち。
 聡明さとしなやかさを兼ね備え、自然体で激動の時代を生き抜く彼女らを三部構成でドラマチックに描き出した壮大な大河ロマン!

 加賀藩主前田斉広(なりなが)の三女・勇(いさ)は、生後半年で加賀大聖寺藩主前田利之(としこれ)の次男・利極(としなか)のもとに嫁ぐことが決まっていた。やがて生まれ育った金沢を離れ江戸へと嫁いだ勇は、広大な屋敷のなかの複雑な人間関係や新しいしきたりに戸惑いながらも順応し、大聖寺藩になくてはならない人物になっていく。だが、石高十万石を誇る大聖寺藩の内実は苦しかった。その財政を改善させるような産業が必要と考えた利極と勇が注目したのは――(「第一章 てんさいの君」)。

 加賀藩の分家・小松藩の子孫である万里子。パリで生まれ、ロンドンで育った彼女は、明治41年帰国し、頑なな日本の伝統文化にカルチャーショックを受ける。やがて家とも深い縁のある九谷焼アメリカで売る輸出業に携わることとなり、徐々に職業夫人への展望をいだくが、万里子の上に日本伝統のお家の問題が重くのしかかる。日本で始めてサンフランシスコ万博の華族出身コンパニオンガールになった女性は、文明開化をどう生きるのか――(「第二章 プリンセス・クタニ」)。

 貴族院議員・深草也親を祖父に持つ花音子は、瀟洒豪壮な洋館に生まれ育ち、何不自由なく暮らした。だが、花音子が幼稚園に上がるちょうどその頃、昭和恐慌によって生活は激変。すべてを失った花音子と母・衣子は、新宿の劇場・ラヴィアンローズ武蔵野座に辿り着く。学習院に通いながら身分を隠して舞台に立つ花音子は一躍スターダムにのし上がるが――(「第三章 華族女優」)。
                                        (出版社HPより)

 新聞の書評欄で紹介されていて、興味を持った一冊。
 面白かったです。テンポよく進んでいくジェットコースターストーリー。どこまでが史実なんだろう、というのは何度も思いました。
 ネットで調べると、どうやら第二章、第三章は創作のようで。うん、第三章はそうだと思った、こんな女優さん、全然覚えないもん。でもよく繋げたなぁ、「これをもとに太宰治の『斜陽』が…」とか書かれると、一瞬「え??」とか思ってしまった。
 いや、第二章とかでもね、当時こんな行動取ってたらふしだらだとか不謹慎だとか、あらぬ誤解を受けただろうに、それをはねのけての快進撃、大活躍。何しろ周囲の人が理解ある人ばっかりで、主人公幸せだなぁ。
 「政略結婚」という題名の割には、第三章まるっきり関係なかったですね。政略結婚からの脱却した、ってことなんだろうか。でも第一話の勇姫にしても結婚生活自体は幸せだったし、第二章の万里子さんも、親に決められた相手だったとしても悪い相手じゃなかったんだよなあ。
 恋愛要素自体は薄くて、そこが私が読み易かったポイントかもしれないです(苦笑;)。