読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

新参者 東野圭吾著 講談社 2009年

 ネタばれあります、すみません;

 東京、日本橋のマンションでひとり暮らしの40代女性が絞殺された。二年前離婚して、翻訳家として一人立ちし始めた途端の事件。この町に赴任したばかりの刑事・加賀恭一郎が事件の謎を解き明かすため、未知の土地を聞き込みに廻る。
 被害者・三井峯子のマンションを訪れていた保険外交員のアリバイを確認するために煎餅屋へ。煎餅屋の老婦人から診断書を受け取った後の空白の時間は、どうして生まれたのか。
 被害者の部屋にあった人形焼の入手経路を求めて料亭へ。料亭で働く見習いの少年は、主人に頼まれて、土産用の人形焼を買っていた。でも、中の一つだけ、ワサビ入りだったことは知らなかった。
 被害者のパソコンのメールから、瀬戸物屋へ。そこに嫁いできた若い娘は、どうやら被害者に個人的な買い物を頼んでいたらしい。被害者はそこで夫婦箸の取り寄せを依頼していた。
 被害者が知り合いに送ったメールの内容から、時計屋へ。被害者はそこの主人と、散歩の途中でばったり会っていたらしい。しかし出会った場所が、主人の証言と食い違う。水宮天で会ったことを、主人はどうして隠したがるのか。
 被害者は、洋菓子屋の店員にとても優しかったらしい。「役者になる」と家を飛び出して行った息子の恋人だと勘違いしていたようだ。そうして、被害者がこの町に住むようになった理由が明らかになる。
 第一発見者の翻訳家の友人は、近々結婚する予定だった。自分が約束の時間を遅らせなければこんなことにはならなかった、被害者を翻訳家として独り立ちさせると約束していたのに、自分の都合で中途半端に投げ出す結果となった、と悔やむ彼女。そんな彼女に加賀は告げる、被害者は彼女と仲直りするつもりでいた、と。
 被害者の元夫、清掃会社の社長の元へ。不況の中、若い女性秘書を雇い始めて、社員から不穏な噂を立てられている社長。事情によっては、被害者の離婚時の慰謝料も請求しなおされるかもしれない。だが加賀は別の可能性を示唆する。
 凶器となった紐の出先を求めて、民芸品屋へ。孫への土産として、昔ながらの独楽を買って行った客が一人、だがそれは犯行日より後のことだったらしい。その客と事件は関係があるのか。
 犯人の真の犯行動機を明らかにするため、加賀は日本橋署のとある刑事に取り調べを依頼する。息子を事故で亡くした刑事に。…


 ドラマにもなってましたよね。
 面白かったです。
 これは、推理小説としてはアンフェアかもしれない。犯人が出て来るのは後半になってからですもんね。でも一つ一つ、捜査上に浮かんでくる疑問を丁寧に解いていく様子が面白くて心地いい。
 何しろ、証言者がみんな本当のことを言わない(笑)。それは自分の意地だったり、後ろめたさだったり、誰かを守るためだったりするんですが、相手の立場を尊重しながら真実に近づいていく加賀刑事の、まぁ人を見る目の暖かいこと、後味いいなぁ。でもその分キャラクターは薄い気はしますが(笑)。
 最後の方で、金銭にだらしない若夫婦を出した所もらしいかなぁ、と。みんな善い人、では終わらないのがね。