読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

アイスクリン強し 畠中恵著 講談社 2008年

 連作短編集。
 明治の築地居留地で、西洋菓子屋の若主人と元幕臣の警官達「若様組」が繰り広げる「スイーツ文明開化」騒動記。(帯文より)

 明治もはや23年。
 孤児として生まれ育った皆川真次郎は、築地居留地の宣教師の家に置いて貰ったために洋菓子作りに精通していた。今の世には珍しい洋菓子店・風琴屋を開こうと資金調達に汲々とする日々、だが店に来るのは幼馴染の警官達ばかり。元幕臣の彼らは警官の安月給をやりくりして家老たちを養うため、やはり豊かとはいえない生活。今日も揃いでやって来て、試作品の洋菓子をぱくついている。

 チヨコレイト甘し:
 ひょんなことから知り合った相馬小弥太と言う若者、某松平一万一千石の元藩士の倅らしい。同じ藩にいた士族達に追われている。何でもお家再興のため旧松平藩のご側室の御嫡男を探していて、小弥太の持っている殿の愛用品・刀の鍔が手掛かりであるに違いない、と思い込みも甚だしく小弥太が追いかけ回されているのだとか。何だかんだで風琴屋に小弥太を匿うことになってしまった真次郎。資金援助を窺う為のパーティー料理に忙しいと言うのに、やっぱり前日に押しかけられて、下ごしらえを滅茶苦茶にされてしまった。腹立ちまぎれに鍔をお堀に投げ捨てて、真次郎は何とか料理を間に合わせようとする。 

 シユウクリーム危うし:
 貧民窟・万年町に、巡査たちとやって来た真次郎。警官からでもかっぱらいをしようとする逞しい子供たちを従えて、安野の親分が現れた。先日、母親に死なれ一人とり残された士族の娘・かの子の家に、泥棒が入ったので見てやってほしいと言う。今のところ何も盗られたものはないが、もしかしたら賊の狙いは母の形見かもしれない、と差し出された簪はどう見ても安物。だが意匠が変わっていて、かの子の生まれ故郷の麦が彫ってあるとか。真次郎は警官の長瀬と共に、ごろつき共が新種の麦を狙う目的について考える。

 アイスクリン強し:
 真次郎が女学校にアイスクリンの作り方を教えに行ったことが、面白可笑しく新聞記事になってしまった。「若様組」のこともあることないこと書き立てられている。長瀬と真次郎がかの記事を載せた多報新聞に文句をつけに行ったところ、どちらも匿名の投書を元にしていると言う。一体誰がそんな投書を寄せたのか。

 ゼリケーキ儚し:
 幼なじみの小泉沙羅に見合い話が持ち上がった。沙羅の家ははっきり言って成金、相手は伯爵のお血筋だとか。その頃町ではコレラが流行り、若様組の面々も次々と衛生警察に配属されていた。長瀬は上司の大河出泰時警視から、彼らの命を楯に、加賀三太郎と言う人物の人探しを命じられる。万年町で見つけた加賀は警視の甥で、しかもコレラに罹患していた。貧民窟の人々は警官らに敵意を抱いており、新聞社で治療法を聞いてきた真次郎の言うことも聞きはしない。

 ワッフルス熱し:
 若様組と真次郎の元に差出人不明の手紙が届いた。自分が何者か推測し、自分の望むものを手に入れて差し出せば報奨金を与えるとの内容に、じいやが倒れて薬代の要る長瀬が飛びついた。送り主は貿易商・小泉商会の社主小泉琢磨だろうと察しを付けたのは良かったが、他の若様組の連中も同じことを考えていたらしい。小泉社主が欲しているものは次に流行るものか、横領阻止か、不正事件解決か、それとも一人娘・沙羅の護衛か。だが真次郎はどうもやる気にならない。…

 畠中さんの新シリーズ。…なんでしょうね。
 何なんだろう、どうももう一つピンと来なかったなぁ。長瀬以外の巡査たちの区別がつかなかったせいかな、松平藩主のお世継問題が尻すぼみになったせいかな。小弥太も加賀三太郎も途中で消えちゃった感じだしなぁ。明治の世を明るく描くのか不安な世相を斬って行くのか、その辺りもふらついた気がしたし。
 装丁とかは物凄く可愛いのになぁ。続編でもっと方向性が見えるんでしょうか。続けて読むつもりではあるんですが。