読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

時ひらく 辻村深月/伊坂幸太郎/阿川佐和子/恩田陸/柚木麻子/東野圭吾著 文春文庫 2024年

 三越デパートをお題にした短篇集。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 思い出エレベーター 辻村深月
 制服の採寸のため老舗デパートに来た大地。天女の像を見上げながら、あの日のことを思い出す。小学校に上がる前、「ちゃんとした服」を買いに来た日、母親からはぐれて不思議なお兄さんに会ったあの日。この店は自分たちの家族の歴史を知っている。

 Have a nice day ! 伊坂幸太郎
 エンドウさんとは、エンドウさんのお母さんのマルチの大活躍をきっかけに知り合った。高校受験の重圧に潰されそうになっていた「私」フジサキは、三越のライオン像に乗ると願いが叶うという噂を信じ、実行するべく仙台三越に向かう。たまたまその場に居合わせた学校教師の協力も得て、いざライオンにまたがると、フジサキの脳裏に不思議な映像が浮かんだ。十年後、その光景が現実のものになる。

 雨あがりに 阿川佐和子
 父親の快気祝いを購入するため、母と三越で待ち合せる。父の後妻で、自分とは血の繋がらない母とは、昔の彼氏曰く「思想があわない」。リモート会議で少し離れている間に、すっかりはぐれてしまった。

 アニバーサリー 恩田陸
 三越の店の様々なものが命を宿し、創業当時からの噂話に花を咲かせる。 

 七階から愛をこめて 柚木麻子
 ロシア人の友達アンナと共に、三越へ来た「僕」奏。ロシア語で従妹に宛てて書いたメッセージは、時空を超えて響きあう。戦前、誇りをもって三越に勤めた女性と、時代を憂う華族の令嬢に。

 重命る(かさなる) 東野圭吾
 湯川の元を草薙が訪れた。隅田川で見つかった男性溺死体、癌で余名宣告され、恩人たちにお礼回りをしていた最中だったという。遺産を巡って先妻とその子が不穏な動きをしており、殺人が疑われた。果たして、男を撥ねたトラックが特定されたが、遺体が川から見つかった訳が分からない。瀕死の状態で故人自らが川に落ちた意味とは。…

 辻村さん、恩田さんの名前を見て借りた一冊でしたが、改めて見ると豪華なラインナップだったんだなぁ。
 関西在住の私からすると、三越の特別感 というのはもひとつピンとこないんですが、それでもその特徴、高級感は伝わりました。というか、これに触れずにはいられないんだな、という事柄が結構重なっていたので。ライオン像は勿論、天女がいるんだな、オルガンがあるんだな、食堂というかお子様ランチが有名なんだな、って感じで。
 辻村さんの話、すぐ着られなくなる子供服を三越で誂え、ってどんなお金持ちだよ??と反感ぎりぎりでしたが(苦笑;)、祖母の「一番、いいのを」って台詞にはうっかり泣きそうになりました。両親ではなく祖父母、ってのがミソですね、愛情が台詞から溢れ出ている。
 恩田さんは豆知識たっぷり、エリザベス女王昭和天皇に愚痴ったというアメリカに対しての「あんな、こんなところ嫌だって出ていって、独立したって言い張る人たちの前で、一体何を話せばいいのかしらん」には思わず吹き出しました。
 伊坂さんのワードセンスはやっぱり好きだなぁ。こんな突拍子もない話、成立を許せるのは伊坂さんならでは(←褒めてます)。
 ラストは東野さん、湯川先生の登場にびっくり。こういうお題ありきの作品、得意そうですよね~。相変わらずの安定感でした。

増山江威子さん

 ネットで訃報を知りました。

 『悟空の大冒険』の竜子ちゃん、『キューティーハニー』の如月ハニー、『天才バカボン』のママ、『一休さん』の母上さま。勿論、『ルパン三世』の峰不二子も。小さい頃から、それこそ生まれる前から耳に馴染んだ声。
 艶のある滑らかな声、可愛らしく優しさに溢れているかと思えば妖艶であでやか。同じ声なのに、演技力で全ての役に合わせていく。
 映画『カリオストロの城』はTVで放送があるたびにやっぱり見てしまって、で、「まさか、捨てたの」の場面でくすっと笑ってしまいます。

 お声が流れてくるだけで嬉しくなってしまうような方のお一人でした。
 ご冥福をお祈り致します。

姥玉みっつ 西條奈加著 潮出版社 2024年

名主の書役として暮らすお麓の閑居へ、能天気なお菅と、派手好きなお修が転がり込んできた。ふたりとも、いわば幼馴染である。お麓は歌を詠みながら安穏の余生を送ろうとしていたのだが――。ある日、お菅が空地で倒れた女と声が出せない少女を見つけてきた。厄介事である。お麓にとって悪夢のような日々が始まった。

3人揃えば、騒がしさも厄介も3倍。されど、喜びも感動も3倍⁉
                   (出版社紹介文より)

 初め、お麓目線で話が始まることもあって、お菅さんがどうも鬱陶しくって; 無神経な上マイナスなことばかり愚痴るお菅さん、寂しがり屋でこちらの状況顧みずつきまとう。…こりゃ確かに大変だわ;; 後々情に深い、いわゆるまっとうな価値観の持ち主としての美点はでてくるんですが、それを振り回して息子夫婦との折り合いが悪くなったという一面もあり。全く、長所は短所ですね(苦笑;)。
 お麓の、冷静に物事を俯瞰で見る性分は、私はそんなに悪く思えなかったので、本書内でお修さんに言われる忠告は、さして私には響きませんでした。でもお麓さん本人には響いてるんだよなぁ。いや、出来ないことを周囲の協力あてこんで引き受けるより、自分の範囲内で処理する方が適切じゃん。「少々素っ気ないが、決して不親切ではなく、仕事はそつなくこなす」お麓さんのやり方には共感できてしまいましたねぇ。お麓さんのお兄さんの、金の無心に来るのは云々、ってエピソードも、いや、そういう境遇ならお兄さんの方から手を差し入れるのが本筋では??とか思ってしまう。でもお麓さん許しちゃうんですよね、優しいなぁ。
 女の子を育てることでみんなが良い方向に向かって行く、というのは王道で気持ちのいい展開でした。今度は三人で堺までの旅が描かれるんでしょうか。続編作れそうな終わり方でした。

天然コケッコー 5~6巻 くらもちふさこ著 集英社文庫

 村にお誕生日会を持ち込んだのはさよと浩太朗の母。サユリで開かれたあっちゃんのお誕生日会は、シゲちゃんと大沢君の間に不穏な空気を生む。
 TVの取材に妄想を膨らませたり、お父さんと美都子さんとの関係にやきもきしたり、松田先生の結婚式に出席したり。村ののどかな生活に対し、高校生活は多少浮き沈み。さよは何かと男子生徒にちょっかいを掛けられ、あまりいい気がしない。漸くできた友達 遠山さんは、どうやら大沢君目当てらしい。大沢君の友達 宇佐美君の彼女の田中さんの方が、なんだか親しくなれそうな気がする。
 海水浴、肝試し、夜更かしを許されたお祭り。大沢君はさよと家族ぐるみで親しくなっていく。中二になった浩太朗は、あっちゃんが気になりはじめていた。…

 浩太朗くん、いい子だなぁ。というか、さよのお母さんがいい人なんだよな。お母さんの影響を受けて、さよも浩太朗も素直に育ってる。お父さんへの苛立ちも分かるんだよなぁ(苦笑;)。子供へのイヤミもどうかと思うけど、誤解受けるような行動取ってるのも。
 遠山さん、あんな態度で女友達から総スカンは食らわないのかしら。ヒトの彼氏を取ろうとしてる訳だし、それを彼女を通じてやろうとしてる、って凄いなぁ。さよの高校生活は順風満帆ではなさそうです。
 次巻に続きます。

バルバラ異界 全4巻 萩尾望都著 小学館フラワーズコミックス

 西暦2052年。他人の夢に入り込むことができる”夢先案内人”の渡会時夫は、ある事件から7年間眠り続ける少女・十条青羽の夢をさぐる仕事を引き受けることになった。その夢の中で青羽が幸せに暮らす島の名は〈バルバラ〉。現実世界でも幻の島として瀬戸内海に時々現れるという。だがこの島は、時夫の息子キリヤが、自身の逃げ場所としてパソコン上に作り出したものだった。
 離婚した妻明美はエキセントリックな性格で、時夫とキリヤが会うことを嫌ったこともあって、二人の時間は2歳から中一まで空いている。キリヤ15歳の現在では、何ともぎこちない関係に。それでもキリヤに歩み寄ろうとする時夫。一方、〈バルバラ〉の世界では、永遠の命を手に入れるための奇妙な儀式が行われていた。
 「死者の心臓を食べること」――そうすることで記憶も引き継がれるという。夢の中で儀式に巻き込まれた時夫、青羽と一緒に暮らす少年タカは、時夫を「お父さん」と呼ぶ。現実世界では、転入生のパリスがキリヤを見て「君はタカだ」と話しかけていた。
 夢と現実が交差する。キリヤの前に青羽が現れ、「心臓を食べる」よう勧める。皆が一つになる世界、火星ではそうだったと。やがて、青羽の夢の世界が100年後の地球で、火星と戦争が起きた後の世界であるらしいことが分かってくる。
 若返りの研究をしていた青羽の祖父エズラは現在は行方不明、違法な実験も繰り返していたらしい。明美も知らず実験材料となる卵を提供していたとか。急激に年老いた彼は、一族の秘密や研究データなどが入ったデータをキリヤに、ひいてはパリスは時夫に渡す。折しもキリヤは、現実世界で瀕死の重傷を負っていた。時夫はキリヤの夢の中に入り、キリヤを救おうと奔走する。…
                   (裏表紙紹介分に付け足しました)

 萩尾望都作品の中でも屈指の難解さと評判の高い本書。…うん、でも個人的には『銀の三角』よりマシだったような…。あれは高校生の頃読んだんですが、本当に分からなかった。
 改めて説明するのは難しいんですが、でも確かに繋がってるんだよなぁ。火星にルーツを持つ一族、記憶の継承、急激な老化に見舞われ、それを阻止しようと研究する。彼に恋する女性たち、特に明美さんはかなり激しい性格で、これはお近づきになりたくないなぁ、と思ってしまいました(苦笑;)。…というか女性陣、みんな今イチ好感の持てない人たちばっかりで、萩尾さんこの時期何かあったのかしら(苦笑;)。
 予知夢の中で何度もやり直しをして未来を変えていく。時夫の望みは全ては叶わないとしても、より良いものに。
 『銀の三角』も今読んだら少しは理解できるのかな。
 「火星」といえば『スター・レッド』だよなぁ、と妙に嬉しかったです。

天然コケッコー 3~4巻 くらもちふさこ著 集英社文庫(コミック版)

 修学旅行は東京へ。そよは田舎の良さを再認識する。
 田んぼの草取り、海水浴。大沢君の東京の友達が遊びに来た日が台風と重なって、町の避難所に泊まることになったり、その間にそよのお父さんと大沢君のお母さんは何だか焼け木杭には火が付いたのかな?という状況になってたり。
 森町との合同運動会は何だか不穏な空気をはらむ。そよと大沢君は森町の高校に進学予定だというのに。ただでさえ慣れない人の多さに、そよは体調まで壊し気味。…

 シゲちゃんイヤだな~、としみじみ思ってしまいましたよ。楽しみにしてたあれやこれやを台無しにされてしまう感覚、それはお父さんもそうだったりするのですが。で、偉大なのはお母さんなんだよなぁ。
 基本的にはそよちゃん目線で描かれているので気付きにくいんですが、それでもそよちゃんのイヤなところ、無神経さや鈍さも見え隠れする。そよちゃん、本当に美少女なのね~。
 高校生になって登場人物も増える様子、のどかな人間関係だけではくなりそうです。次巻に続きます。

梅津秀幸さん

 ネットで訃報を知りました。

 私の中では、『有頂天家族』の赤玉先生がメインの役になるのかなぁ。
 もっと印象に残ってるのは、『シティーハンター』の番組レギュラーなんですよね。山寺宏一さんと並んで、エンディングにクレジットされて、様々な役を演じてらっしゃる。何色にでも染まる、何でもできる演技巧者。
 まだまだお若いのに、残念でなりません。
 ご冥福をお祈り致します。