読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ともしびをかかげて 上下 ローズマリ・サトクリフ著/猪熊葉子訳 岩波少年書店 2008年

 英国での出版は1959年。ローマ・ブリテン三部作(後に四部作)の三作目。
 解説は上橋菜穂子さん。

 衰退したローマ帝国は、450年にわたるブリテン島支配に終止符をうつ。地方軍団の指揮官アクイラは、悩んだ末に軍を脱走し、故郷のブリテン島にとどまることを決意した。父と妹フラビア、家庭教師や使用人の待つ農場に帰るアクイラ。だが二日後の夜、そこはサクソン人に襲われる。
 フラビアは奪われ、残りの人間は惨殺された。アクイラは父を殺した首領を倒し、そのために「生きたままオオカミに食い殺されろ」とばかりに木に縛り付けられ、放置される。だがオオカミは来ず、やって来たのは別のサクソン人だった。アクイラは彼らの奴隷として、ウラスフィヨルドに連行される。
 ウラスフィヨルドは寒さの厳しい、過酷な土地だった。掠奪を生活の中に組み込まなければならないような。度重なる飢饉に襲われ、人々はとうとう移住を決意する。アクイラは三年ぶりに、ブリテンの地に戻った。
 合流したヘンゲストの居留地で、アクイラは妹と再会する。フラビアは父を殺した男の息子の妻になっていた。
 二日後、サクソン人側についたボーティガンを招いての宴会の最中、アクイラはフラビアの助けを借りてこの地を脱走する。迷い込んだ森林の中、アクイラは一人の修道士に巡り合い、救済を受ける。ニンニアスと名乗った男はアクイラに、アンブロシウスを訪ねることを提案した。
 アンブロシウス。かつてブリテンを治めていたコンスタンチヌスの息子。父が仕えていた人物。そのため、ボーティガンはサクソン人を使って、父の農場を襲撃させた。アクイラは、アンブロシウスのいるアーフォンの砦に向かう。
 アンブロシウスの元でアクイラはめきめきと頭角を現していく。アンブロシウスの元に来たボーティガンの息子たちと絆を深めるため、族長の娘との政略結婚相手に選ばれるほどに。ボーティガンはヘンゲストの美しい娘に目が眩んで妻を追い出し、為に息子たちの不興を買っていた。
 一見増えていく仲間は、だがもろかった。三人の息子のうち一人が暗殺され、一気に同盟は崩れていく。決してアクイラ夫婦の仲はよくなかったが、妻のネスは夫の元にいることを選ぶ。
 迫りくるサクソン人たち。一旦結ばれた講和も、5年後には破棄された。激しい戦いの中、アクイラは目の前に、フラビアとそっくりの顔立ちをした若者を見つけてしまう。重傷を負ったその戦士を、アクイラは覚悟を持って助ける。…

 
 『ローマ・ブリテン三部作(四部作)』、とりあえず二冊は読んだのでもう一冊も読んでみるか、と借りてみました。
 面白かったです。今までの中で断トツだったなぁ。そして、上野菜穂子さんの作品の根底に、この作品があるということがよくわかりました。多分この物語がなかったら、『守り人』シリーズのヒュウゴや、『鹿の王』のヴァンは生まれなかったのではないかしらん。
 軍からの逃亡という自分の選択のために、目の前で妹を浚われ、自身は奴隷の身に。期せずして巡り合った妹は子を宿し、敵地で自分の居場所を作って生き延びていた、しかもその息子とさらに戦場で出逢うドラマチックさ。
 妹のことは自身の棘でもあり、誰にも話すこともできない。しかも似たような境遇に、自分の妻や息子を置かざるを得ないジレンマ。
 相変わらず翻訳文は私には読み難くて、「あれ、今どういう状況だ??」と前のページを繰って確かめることもあったのですが(苦笑;)、それを差し引いても後半読書スピード上がりました。
 さて、残り一冊、どうしようか。どうもその一冊だけ、ずいぶん時間が経ってから発表されたみたいなので、ちょっとだけ不安です。