読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

占い師はお昼寝中 倉知淳著 創元推理文庫 2000年

 渋谷のおんぼろビルにある「霊感占い所」には、今日も怪現象に頭を悩ますお客さんがやって来る。身の回りのものが消え失せていくサラリーマン、ポルターガイスト現象に苛立つキャリアウーマン、写真を撮ったら背後に霊が写った学生、そしてドッペルゲンガーに悩む主婦。そんな彼らの相談に応えて占い師が口にするのは、奇天烈な霊や妖怪の名前ばかり。それらは全部インチキだが、しかし彼の「ご託宣」はいつも見事に怪異の裏に隠された真実を突く。
 始終寝ている占い師・辰寅叔父と、巫女役をつとめる美衣子の心優しき日々を描いた安楽椅子探偵連作集。                                  
                                      (中表紙の文章より)


 三度狐
依頼者は一流商社の営業マン。最近身の回りのものがよく無くなるのだという。ゴルフクラブに仕事の書類、ビジネス書など。会社での立場や家族構成を聞いた叔父は、それは「三度狐」の仕業でもう怪異は起きない、失せ物は縁の下にあるだろうなどとご宣託する。果たして真相は。

 水溶霊
30代前半、いかにも仕事のできそうな美人キャリアウーマン。家でポルダーガイストが起きるのだという。仕事から帰ると化粧水や香水の瓶がぶちまけられていたり、醤油やソースがこぼれていたり。無職で只今求職中の夫は家事はしないタイプだという。叔父は、それは「水溶霊」が原因だ、引っ越してみればどうか、とアドバイスする。叔父は何を示唆したのか。

 写りたがりの幽霊
心霊写真を持ち込んできた学生は、いかにも軽薄そうな男だった。旅先でサークル仲間に撮られた写真は、いかにも怪し気で胡散臭い。だが意外なことに、依頼者自身、あまり写真を気にしていない様子。叔父はそこから、サークル仲間たちの人間関係を見抜いてみせる。

 ゆきだるまロンド
いかにも下町のおばちゃん、という女性が今度の依頼人。もう一人の自分がいるらしい、と語り出す。旅行に行ったと触れ回ったり、高級宝飾店に手袋を忘れたり、町内会の旅行を勝手にキャンセルしたり。だが自分にはその全て身に覚えがない。話を聞いた叔父は、「雪だるま」の仕業だろう、と断言する。

 占い師は外出中
叔父の留守中に、二人の老人がやって来た。片方の老人の家に、血塗れの幽霊が出るので出張除霊をしてほしい、という。どんどんエスカレートする話に眉を潜める美衣子。お札で追い払ったものの、後からその様子を聞いた叔父は別の結論を出す。

 壁抜け大入道
依頼人は小学後六年生の男の子。工場で残業する父親にお弁当を届けに行ったら、一つ目の大入道に出くわしたという。丁度その日、工場に泥棒が入り、父親が疑われてしまった。大入道は壁をすり抜けていたし、犯人はそいつだという男の子。盗難事件は専門外だ、と無視を決め込む叔父に対し、すっかり同情した美衣子は工場周辺の聞き込みに回る。一つ目の大入道の正体は。…


 『アメトーーク!』の読書芸人の回で、カズレーザーさんがお勧めしていた倉知さん。ミステリーランドの作品一冊しか読んでなかったよなぁ、と手に取ってみました。
 面白かったです。安楽椅子探偵のお手本のよう。この先の動向追わないの??って先の気になるような依頼人もいたのですが、それはあっさり一話完結するのね~。
 読み易い話の中に、ふと垣間見える人間の業のようなもの。でもそれも匂わせるだけ、辰寅叔父も美衣子ちゃんもいい人なので、後味が悪くならない。短編集っていいなぁ。