読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

濱地健三郎の霊(くしび)なる事件簿 有栖川有栖著 2017年 角川書店

 連作短編集。

 

 彼には、真実も幽霊(ゴースト)も視えている――。
 心霊探偵・濱地健三郎には鋭い推理力と、幽霊を視る能力がある。新宿に構える事務所には、奇妙な現象に悩まされる依頼人だけでなく、警視庁捜査一課の辣腕警部も秘密裡に足を運ぶ。ホラー作家のもとを夜ごと訪れる、見知らぬ女の幽霊の目的とは? おばけ屋敷と噂される邸宅に秘められた忌まわしい記憶とは? ある事件の加害者が同じ時刻に違う場所にいられたのは、トリックなのか、生霊の仕業なのか? リアルと幻惑が絡み合う不可思議な事件に、ダンディな心霊探偵が立ち向かう。端正なミステリーと怪異の融合が絶妙な7篇。
 名手が満を持して生み出した異才の探偵、新シリーズ開幕。 (帯文より)

 

 見知らぬ女
心霊探偵濱地健三郎の元に、ホラー作家の妻が訪ねて来た。六週間ほど前から夫の様子がおかしい、しかも側頭部がぱっくり割れた女が憑いているのが視える、と。夫はそんな女は知らない、と信じようとしない。濱地は憑いている女の身元を調べることから始めた。

 黒々とした孔
頭部を切断されて、トランクに詰められた女性の遺体。女性の自宅は放火されている。彼女の父親が、濱地に事件解決の依頼に来た。芸能記者の彼女は、とある女優の息子に接触していたらしい。濱地は息子に会うことにする。

 気味の悪い家
濱地の助手 志摩ユリエも、どうやら「視える」体質になって来たらしい。二人は依頼を受けて、お化け屋敷と噂になっているとある洋館を訪ねた。入った人々の気分が悪くなるというその家は、元は画家のアトリエ兼自宅で、その画家自身、妻とモデルに駆け落ちされた後自死したとのこと、果たして、ユリエも不快感に襲われる。
 
 あの日を境に
新潟へ海水浴がてら泊りデートをした後、恋人の態度が変わってしまったと悩む女。男の方も自分のことなのに何が原因か分からず、苦しんでいる。ひょんなことからユリエは二人に関わり合い、濱地を紹介した。濱地は女を連れて新潟の海に戻る。

 分身とアリバイ
恋敵の男を殺したとして疑いを掛けられた男には、鉄壁のアリバイがあった。担当刑事から個人的に依頼を受けて容疑者に会った濱地とユリエは、彼に女が憑いているのを視る。果たしてその女性は、別の事件の被害者だった。

 霧氷館の亡霊
同居していた祖母が死んでから、その孫息子の様子がおかしい。何かうろうろしていると言い、落ち着かない様子なのだとか。依頼者の館に赴き、同居人たちと共に食事をしていると、祖母の霊が現れた。彼女の思い残しは何なのか。

 不安な寄り道
地方への出張調査の帰り、ローカル電車の中で、濱地は依然手掛けた事件のその後を見に行くと言い出した。同行を願うユリエの前に、一人の老人が現れる。どうやら以前の事件の関係者らしい。…
 
 有栖川有栖さんの新シリーズ。
 『幻坂』で出て来た探偵さん、もしかしてシリーズ化されるのかしら、と思ってたら本当にそうなってしまいました、ロジックを愛する有栖川さんらしからぬ新境地(笑)。
 普通にお話として面白かったです。でもこれミステリーじゃないと思うぞ、こういう風に煽り文句つけるのは違うと思うけど(笑)。
 この探偵さん、何気なくさらっと人を誉めるんだよなぁ、これが気障にならない、ってのは確かにスマート。で、有栖川さんの文章は相変わらずチャーミングだなぁ、と改めて思ったのでしたよ。