読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

夜明けの花園 恩田陸著 講談社 2024年

「ゆりかご」か「養成所」か、はたまた「墓場」か。
湿原に浮かぶ檻、と密やかに呼ばれていた全寮制の学園。
ここでは特殊な事情を抱える生徒が、しばしば行方を晦ます。               
ヨハンの隠れた素顔、校長の悲しき回想、幼き日の理瀬、黎二と麗子の秘密、月夜に馳せる聖、そして水野理瀬の現在。                            
理瀬と理瀬を取り巻く人物たちによる、幻想的な世界へ誘う六編。(出版社紹介文より)

 水晶の夜、翡翠の朝
 学校でおかしなゲームが流行っている。ストローの包み紙で作った白い人形を隠し、その存在に気付いた人を「笑いカワセミが来るぞ!」とはやし立てるというもの。ゲームはエスカレートし、生徒に怪我人が出る悪質な悪戯まで続けて起きた。ヨハンはそれが童謡「わらいかわせみに話すなよ」になぞらえた行為だと気づく。三番の歌詞の見立ては、ヨハンを狙って行われた。

 麦の海に浮かぶ檻
 要と鼎の兄妹は、転校生のタマラと「ファミリー」を組んだ。タマラのエキゾチックな魅力に惹かれて行く鼎。タマラが校長から毒を盛られていると感じた鼎は、彼女と共に学校から逃げ出す計画を立てる。

 睡蓮
 理瀬が、稔と亘と兄妹のように暮らしていた幼い頃。ある日 大柄な美しい女が、可憐な少女を連れて屋敷にやって来た。亘は彼女に惹かれ、理瀬は自分の醜さを知る。

 丘をゆく船
 男装の少女 麗子。黎二は妹のように彼女を可愛がっていた。男装の理由は母親からの虐待らしい。麗子の母親の死に様を知って、黎二は自分の母の死に間際の行動の意味を悟る。傍らには妹の死体があったことも。

 月蝕
 「彼女」が去って、高橋と名乗る数学の女性教師が来て以来、聖は高橋に見張られている気がしている。黎二、麗子、憂理、ヨハン、校長。自分の周辺で起きる様々な出来事、自然に発生したものなのか仕組まれたものなのか。自分は命を狙われている、アメリカ留学まで無事にいられるだろうか。

 絵のない絵本
 ヨーロッパと中東の境界にあるこの国で、理瀬はクーデターに出くわした。ホテルでヴァカンスを楽しむ筈だったのに、爆発に巻き込まれた。不審なことに、宿泊客たちはのきなみ姿を消している。遺跡発掘団の教授や学生たち、ロシア人のカップル、ドイツ人の老夫婦は自殺死体で見つかった。幼い少女を連れた女性は、理瀬の正体を知っているらしい。…

 理瀬シリーズ外伝。『水晶の夜~』と『麦の海に~』は読んだ覚えがありました、アンソロジーに載ってたんじゃなかったかな。
 外伝だけあって内容結構ぼんやりしていて、「こりゃ本編読んでる人にしか分からんだろうなぁ」と思いました。…というか、私自身「誰だったっけ」「どんな話だったっけ」と脳みそ絞り出すこともしばしば、記憶力の低下が憎いわ; でもこれを機会に「何これ」「知りたい」と思う人もいる筈。それだけ思わせぶりたっぷりで、本編面白そうに見える。…とか言いながら、私「全然内容進んでないじゃん」とこっそり思ったりもしたんですけどね、すみません;
 でもやっぱり好きなんだよなぁ。「女の子は作られる。男の子や大人の目が女の子を作る」という文言とか、妙に沁みてしまう。今時 男女関係なく誰だってそうだよ、と思われるかもしれませんが。
 この作品にゴールってあるのかな。読みたいような読みたくないような、でも続編は読みたいです。…その前に色々読み返さなきゃいけないかもなぁ;;