読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

漂う提督 アガサ・クリスティー他/中村保夫訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1981年

 ネタばれというか(元々きっちりしたネタがある話ではないんですが)、なってるような気がします、すみません;

 1932年、英国の〈探偵クラブ〉が大胆なリレー長篇を企画した。有名作家13名が各章を書き継いで、一作の長篇本格ミステリ小説を作るのだ。しかも、参加者は他の作家たちが各々想定した「解決」を知らないまま執筆しなければならないという厳しいルールが課せられた。はたしてそんなことが可能なのか?
 クリスティークロフツセイヤーズら、黄金時代の巨匠たちがその総力を結集した、貴重きわまりない幻の本格ミステリ。                                 (裏表紙の紹介文より)

 イギリスの片田舎リンガムのホウィン川に、早朝、牧師館のボートが浮かんでいた。中には男の死体が一つ、どうやら牧師館の川向かいのランデル・クロフト館に住む元海軍提督ペニストーンが刺殺されたらしい。8月だというのに外套を着て、ポケットには新聞を突っ込んでいた。前日は同居している姪エルマ・フィッツジェラルドと共に、牧師館のディナーに招待されていたと言う。やがて、提督はディナーの後、ロンドンまで行っていたことが判明する。
 行方不明のエルマの兄・ウォルター、提督の中国での失態を知っていたサー・ウィルフレッド・デニー、牧師の元から家出した妻、エルマとの結婚を反対されていた実業家アーサー・ホーランド。牧師もデニーもエルマまで、事件の後ロンドンへ去って行く。事件の夜に停まっていたタクシーは、ロンドン行きへの最寄り駅ホウィンマスのホテルに現れたのは本当に提督なのか。ラッジ警部は事件を紐解いていく。…


 仕事場の別の部署の女の子が、アントニイ・バークリーの文庫本を読んでるのを見てびっくり。思わず声をかけたら、貸してくれたのがこの本です。
 …確かに濃い本だった(笑)。途中までは順序通り読んでいたのですが、次々新たになる事実に「これは各作者の『ここまでの段階での見解』を確認した方がいいかも」ってんで、各パートを読み終えるごとに予想解決編も確認することにしました。
 ドロシー・L・セイヤーズかっこいい、クリスティ荒唐無稽だけど面白い、最後の解決編を受け持ったバークリーはまさしく力業(笑)。でもほとんどの作家が似たような見解になってる、ということに感動すら覚えました。ロナルド・A・ノックスの中の一文「謎の中国人が犯人だということはありない」には思わず笑みがこぼれましたし。
 統一感がないのはご愛敬、個性ってやっぱり漏れ出てくるものなんですね~。個人的にはクリスティがやっぱり好きだな、と思いましたよ。