読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー 文藝第三出版部編 講談社ノベルス 2017年

 テーマは「名探偵」。新本格ミステリブームを牽引したレジェンド作家による書き下ろしミステリ競演。
 ファン垂涎のアンソロジーが誕生!                         (出版社HPより)


 水曜日と金曜日が嫌い ――大鏡家殺人事件―― / 麻耶雄嵩
木枯らし吹きすさぶ山林で遭難しかけた「私」は、崖っぷちに建つ洋館に行き当たる。保護されたそこは大鏡邸、折しも二年前に亡くなった館の主・大鏡博士を偲んで、明後日には養子四人による四重奏が演奏される算段になっているという。だが、四人のうちの一人が露天風呂で殺害され、演奏会は中止に。岬の先端にあった小部屋(ヒュッテ)では、部屋中に飛び散る血痕と短刀が発見された。容疑者にされた「私」はメルカトルを呼び出す。果たして犯人は残りの三人の養子かメイドか、血痕は誰のものか。

 毒饅頭怖い 推理の一問題 / 山口雅也
落語「饅頭怖い」の後日談。大成した鶯吉は大店の店主へ。隠居して大好きな軍学を究めようとしますが、息子たちは揃ってぼんくら、店を任せるに忍びない。店は優秀な番頭に譲り、息子たちには還暦の祝宴で引導を渡そうと計画しますが、その席で鶯吉は毒饅頭を食らって死んでしまう。犯人は息子たちの中にいるのか、それとも…。

 プロジェクト:シャーロック / 我孫子武丸
警視庁の木崎は名探偵ソフト「シャーロック」を開発した。ネット上でそれは膨張し洗練され、いつしか実際の事件を解決するほどに成長する。やがて、木崎が何者かに殺害された。業務を引き継いだ監察課員の長沢は、木崎のパソコンに自分の死を予期していたかのような記述を発見する。そして、それを見てしまった自分にも危機が迫っていることを知る。どうやら犯罪ソフト「モリアーティ」が起動し始めたらしい。

 船長が死んだ夜 / 有栖川有栖
兵庫県の山間での現地調査の帰り道、火村准教授とアリスは養父市で起きた殺人事件のニュースを聞く。これも何かの縁、と現場を覗いてみるとそこには馴染みの刑事がいて、事件解決に手を貸すことに。
被害者は元船長、今はリタイアして便利屋稼業に勤しんでいた。恋のさや当ての一端を担っていたらしい。夜の間に刺殺された元船長の、部屋の壁に貼ってあったポスターは何故剥がされ、燃やされていたのか。

 あべこべの遺書 / 法月綸太郎
自宅のマンションから転落した男と、やはり自分のマンションで服毒死した男。二人の遺書が入れ替わっていたことから他殺が発覚した。二人は恋敵に当たり、憎しみ合っていたという。どう言う経緯で遺書が、または遺体が入れ替わったのか。法月刑事は息子の綸太郎に相談する。

 天才少年の見た夢は / 歌野晶午
戦争が起こったシェルターの中、子供たちが残された。集められていたのは何かしらの才能に恵まれた子供達、だが外の状態が何も分からない追い詰められた状況の中で次々に殺人事件が起きていく。「名探偵」の才能を持った子供はショック症状からか目覚めないまま。やがてただ一人が残った時、「名探偵」は目を覚ました。
 
 仮題・ぬえの密室 / 綾辻行人
京大ミステリ研名物“犯人当て小説”、かつて幻の傑作があったという。麻耶雄嵩に触発されて、我孫子武丸法月綸太郎もその記憶をかすかに思い起こした。題名は「ぬえの密室」。小野不由美にも心当たりがある様子、だが綾辻行人には一向に覚えがない。
「封印」の小野の言葉に、綾辻の記憶の翼が広がり始める。その「傑作」は何故封印されてしまったのか。…


 ああこれは講談社ノベルスならではの企画だな、と予約を入れた一冊。
 とか言いながら、新刊が出たら必ず読む、って作家さんはこの中では綾辻さん、有栖川さんと我孫子さんの三人なんですけど、すみません;
 で、やっぱり、この三人の作品が頭抜けて好きだな、と言う感想を改めて持ってしまいました。
 有栖川さんのユーモアあふれる可愛らしさ、我孫子さんの思わぬ所から刺されるような発想、綾辻さんは今回エッセイ的な感じですけど、でもどこまで本当なんだろう、という虚と実の入り混じり感は健在。有栖川さんとの友情の深さまで感じられて、何だかこちらまで嬉しくなってしまう。
 私は奥さんの小野不由美さんのファンでもあるので、姿を現わして下さったこともこっそり嬉しかったり。小野さん、露出してくれないもんなぁ(笑)。
 勿論、他の作家さんの密室だったりアリバイトリックだったり胡乱な雰囲気だったり、ファンタジーに見えてしっかりロジカルな展開も」さすが、と思ったんですけど。
 喜国雅彦さんの、ご交流があればこそのイラストも楽しかったです。