読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

明日の子供たち 有川浩著 幻冬舎 2014年

 想いがつらなり響く時、昨日と違う明日が待っている!
 児童養護施設を舞台に繰り広げられるドラマティック長篇。

 諦める前に、踏み出せ。
 思い込みの壁を打ち砕け!
 児童養護施設に転職した元営業マンの三田村慎平はやる気は人一倍ある新任職員。
 愛想はないが涙もろい三年目の和泉和恵や、理論派の熱血ベテラン猪股吉行、“問題のない子供”谷村奏子、大人より大人びている17歳の平田久志に囲まれて繰り広げられるドラマティック長篇。
                                       (出版社HPより)

 有川さんどうしてこういう題材を取り上げたのかしら、と思っていたらヒサの志望校が防衛大、と出て来てああ、と思いました。そうか、自衛隊取材してたらそういう施設の出身の子が多くて、っていう流れだったのかな。…と思ってたら最後に「施設の子からのお手紙」ってのも出て来て、…あれ? 読者からリクエストがあったのかな。
 こういう言い方は不謹慎かもしれませんが、面白かったです。ぐいぐい読みました。大学進学というハードルがこんなにも高いとは。施設を出た後の進路がそんなにも心配なら、どうして手に職をつけるとか資格を取るようにするとか、そちらに考えが行かないのかな。それすら余裕のある考え方なのかしら。でも友人で、準看から働きながら段階的に看護師になった、ってのもいるんですけど。奏子の希望進路「福祉関係」ってのは、それでもあまり実入りとしてはよくない感じするし。
 二日目のカレーを知らないとか、キンモクセイの香りを芳香剤としてだけ取っていたとか、具体的で細かなエピソードの積み重ねに唸りました。そうか、確かに冠婚葬祭の知識なんて、特に法事関係は親戚の集まりで知って行くもんなぁ。
 虐待の連鎖が読書の習慣で途切れて行く、っていう経験則が立証されたらいいのに。それが防げることが、こんなにも簡単なことなら。ヒサの境遇が最後まで具体的に描かれなかったのが、気になるようなならないような…。
 慎平ちゃんの思いは届くんでしょうか(笑)。和泉先生も、もうちょっと物の言い方工夫すればいいのに、というか他の先生や子供たちには気を使ってるから、そういう雰囲気が慎平ちゃんにはあるんでしょうね。こういう子供子供した男性を描いたのは、有川さん珍しいかも。