読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

だれもが知ってる小さな国 有川浩著 講談社 2015年

 有川浩が引き継ぐ、コロボックル物語

 二十年近い前のことだから、もう昔といっていいかもしれない。「ぼく」は小学三年生だった。
 「ぼく」ヒコは養蜂家、通称「はち屋」の子だ。花の季節と共に、日本中を旅している。ある日、お父さんの仕事の手伝いをしていてマムシに遭遇した「ぼく」を救ったのは、誰かがぼくに囁いた「トマレ!」の声だった。
 北海道で同じ「はち屋」の娘ヒメと出会ったヒコは、ヒメからコロボックルの話を描いた『だれも知らない小さな国』を紹介される。その頃にはヒコは、コロボックルの『ハリー』、ハリエンジュノヒコ=ハヤタとトモダチになっていた。
 ヒメが見たいというハマナスの花を、ハリーの力を借りて見つけ出したヒコたちは、そこで「ふしぎな目」を持った青年ミノルと出会う。優しい、特有の時間の流れを持つミノルさん。だが、そこで知り合ったミノルの親戚・トシオは、コロボックルの存在を興味本位で暴こうとしていた。…


 有川さんがコロボックル物語の続きを書かれた、というのは聞いていたので、予習と言うか、この間からシリーズ読んでいたのですが、全部は間に合わなかったですね。でもこの作品自体、『ふしぎな目をした男の子』までが出版された時代を舞台にしているので、まぁ丁度よかったかも。
 まず出だしに驚きました。文体も、初めの方は明らかに「本家」を意識してらっしゃるし。でもすぐ「有川節」になるんだけど。
 これは、明らかに有川さんの作品だなぁ。佐藤さとるさんの、「こんな話とは思わなかった」「ここに焦点当てるのか」って予想外の話のつくりではない、ストレートど真ん中の話。『だれも知らない小さな国』が出版されてる、っていうメタな世界を舞台にしているとは思わなかったし。こう来たか、でしたねぇ。
 もしかしたら作者さんたちには不本意かもしれませんが、この作品を読んで私が思ったのは「他の作家が書いたコロボックルのお話も読んでみたい」でした。トリビュート作品というか、競作というか。二次創作がある程度広がっている今なら、許される土壌ができてるんじゃないかな。有川さんだけではなく、他の作家さんにも背負わせてみたい世界です。