読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

終わり続ける世界のなかで 粕谷知世著 新潮社 2011年

 粕谷知世、4作目。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 1980年。小学5年生の私・岡島伊吹は自分が30歳までしか生きられないことを知った。何故なら1999年、恐怖の大王が落ちて来て世界が滅びるから。
 同じTV番組を見たクラスメイト達も最初は怯えていたものの、日が経つにつれ話題にも登らなくなった。ずっと覚えていたのはただ一人、向かいの家に棲む幼なじみの中原瑞恵のみ。後ろ向きな伊吹に対し、瑞恵は世界が滅びないよう何ができるか頑張る、と言う。瑞恵は成績優秀容姿端麗、正義感に溢れた誰からも好かれる性格。中学に入ってテニスを始めて、全国大会にまで出場するほどの優等生。それも全て世界の滅亡を防ぐために何が必要か判らないから、精一杯全てのことに努力している結果だと言い切る。その瑞恵に感化されて、伊吹も「自分にできること」を探し始めた。とりあえず読書や勉強に打ち込み難関高校に合格、だが背伸びして受かった高校で伊吹は自分の才能の限界を知る。一方瑞恵はテニス推薦を受けて別の高校へ。だが足を痛めて思うようにテニスができなくなり、やがて高校二年の夏、瑞恵はトラックに轢かれて死んでしまう。近所では自殺の噂が起った。
 瑞恵の死は伊吹を拘束した。何も手につかない毎日を過ごした後、とりあえず母親と教師の言うまま進学校の面目を保つ程度の地方の国立大学に入学、そこで「世界救済委員会」の面々と出会う。そして、ノストラダムスの大予言が何の意味もないものだと教えられた。
 「世界救済委員会」に後輩は入って来なかった。先輩方と交わした議論をまとめた「私家版聖書」が学祭での最初で最後の発行物になった。
 卒業して就職して三年目、伊吹は再び「私家版聖書」に巡りあう。会社の後輩・水原由希は偶々この冊子を手に入れて、その内容に感銘を受けたと言う。伊吹を真っ直ぐな目で尊敬する由希に対し、照れ臭さや後ろめたさを覚える伊吹。その頃の伊吹は、映画やコンサートや観劇、そして上司との不倫に溺れていた。やがて由希は伊吹のそんな実情に失望し、新興宗教にのめり込んで行く。そして、あの地震が、地下鉄サリン事件が起きた。
 伊吹は仕事を辞めて故郷に戻り、運良く地元の図書館に職を得た。瑞恵の母と偶然出会い、あの頃の瑞恵の状況を、漸く聞くことができた。瑞恵の母に、自分の知る瑞恵の様子を語ることも。瑞恵の家には、伊吹が就職当時に送った大学の先輩への手紙の返事が誤配されており、伊吹は漸くその手紙を読む。…

 とにかく凄い牽引力でした。もうぐいぐい引っ張られる。
 この話の主人公と私はほぼ同年代です。だからノストラダムスの大予言も勿論知っていて怯えたりしたのですが、それはあくまで興味本位、ここまで真剣に考えることはなかった。何しろ主人公は幻影を見てしまうほどエキセントリックな性格なので、そりゃ周りの人は遠巻きにしたでしょうねぇ。遠巻きにしてはいけなかったんだろう、と今にして思う個人的事情もあり。でも根気がかなり要るんだよなぁ。
 主人公やその先輩が行き着いた結論には、納得するようなしないような。息が苦しくなるような作品でした。