読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

太陽の坐る場所 辻村深月著 文藝春秋 2008年

 ネタばれになってます、すみません;

 あれから十年。高校時代のクラスメイトが女優になった。
 F県立藤見高校旧三年二組のクラス会はその話題で持ちきり。彼女を何とか次のクラス会に呼べないか、と半田聡美に白羽の矢が立つ。
 OL勤めの傍ら、小劇団で女優をしている聡美。だがそんなことは周囲の誰にも言っていない。顔立ち自体はおそらく聡美の方が美しい、クラスメイトを驚かせるのは彼女ではなく自分の筈だった。嫌々ながらも聡美は、映画配給会社に勤めている里見紗江子の伝手で彼女に会う。
 聡美との連絡が取れなくなった。せかされて、紗江子は他のクラスメイトと会う。学生時代は独特の雰囲気で孤立していた紗江子。紗江子の唯一の窓口は物腰の柔らかな親友・貴恵で、紗江子は今、貴恵の当時の彼氏・真崎修と関係している。
 故郷には大手アパレルメーカーのデザイナーとして勤めていると言いながら、その実臨時の雑用係でしかない水上由希。高校時代もそんなに親しくはなかったのに、あの女優は親友だと職場で吹聴している。彼女とのツーショット写真は是非とも欲しい所、クラス会に呼び出して欲しいのに、紗江子ともとうとう連絡がつかなくなった。慌ててクラス会幹事の島津謙太と会う由希。彼女だって来たい筈だ、だってあの子を見返してやりたいでしょう? 由希は高校時代、カリスマから失墜する高間響子とそれにまつわる事件を思い出す。
 銀行に勤める島津謙太は職場での交流が上手くいかず、いたたまれない思いをしている。高校時代、クラスメイトの誰とも仲良くしていた自分が忘れられず、自腹を切ってまでクラス会を開催する島津。由希への想いも捨てきれず、また高校の頃してしまった由希へのいくつかの仕打ちも謝れない。そんな彼の職場を女優になった彼女が訪れる。仕事上の手続きが目的だったが、彼女に会い、島津は幹事役を降りる決意をする。
 高間響子は島津からクラス会の引き継ぎを頼まれた。中学時代に一目惚れした清瀬陽平を追いかけて、彼と同じ高校を受験した響子。完璧な人間を装い、彼への好意を隠しもせず、それが結局、彼も自分も周囲の人も追い詰めた。響子はあの時のプライドを持ったまま、それでも頭を高く掲げてクラス会に出席する。… 

 認めたくないものだな、若さゆえの過ちというものわ(苦笑;)。
 う~ん、かなり私にもイタイ話でした(笑;)。
 自分は特別な人間だと思いあがり、何でも出来ると思っていたあの頃。現実が見えてしまった今、それを実現した級友がいる。しかも自分達とかなり因縁のあるクラスメイトだった。
 いやでもね、思い上がりってのは若い頃の特権ですよ。そのくらい夢持ってないと。
 思い入れし易いのは多分紗江子なんでしょうが、私絶対真崎修みたいな男は好きにならないなぁ。美男子には却って偏見持つ癖があるもので。こいつ絶対性格悪いんだわ、みたいな(苦笑;)。でも真崎も一応本気だったようですね。ちょっと意外と言うか、そこらへんが辻村さん一流の救いでしょうか。貴恵ちゃん、本当にいい子だったんだ。
 水上由希の「伊達に性格悪くない」には思わず笑ってしまいました。自覚してるんじゃん。でも友達にはなりたくないな~。
 キョウコが実は、と言うのはかなり早い段階から気付いたのですが(って言うか辻村さん読んでる人なら疑問に思わない訳がない)、苗字にしては里見紗江子が出席番号一番だし、と思ってたら別の仕掛けがありましたね。
 一番のどんでん返しは響子の性格だな。彼女の描写は語り手の性格の裏返しでもある。性格のいい人と悪い人の落差が激しい作品ですね。いい人は徹底していいのよね~。
 リンクとしてはF県の駅前にできたジャスコでしょうか。先輩アナウンサーの小池トモカってのも何かあったっけ? 
 今回は泣かなかったな~、一応用心して家で読んだのに(笑)。