読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

イマジン? 有川ひろ著 幻冬舎 2020年

ネタばれなってる気がします、すみません;

想像力は、あるかい?

憧れの映像制作の現場に飛び込んだ、良井良助(27歳)。
聞き慣れない業界用語が飛び交う現場に戸惑う日々だが、そこは現実と物語を繋げる、魔法の世界だった。

「必死で知恵絞って想像すんのが俺たちの仕事だ」

やがて良助は、仲間たちが作品に傾ける熱意に、焦がれるような思いを募らせていく——。

走るしか能のない新米、突っ走る!
行き先は、たぶん未来。 (出版社HPより)

 小学5年生の時、TVで見た映画『ゴジラVSスペースゴジラ』。ゴジラに潰される自分の町を見て、良井良助は映像を作る世界に強烈に惹き付けられた。夢を持ち続けたまま上京、だが制作会社の計画倒産のダシにされ、割を食ってどこにも採用されないまま8年。キャバクラバイトの先輩 佐々が、どういう訳か映画製作現場で働こうと誘ってくれた。
 漸く臨めた憧れの世界。TVドラマ『天翔ける広報室』の撮影現場で下っ端として働く日々、とにかくスタッフ一同が気持ちよく、スムーズに動けるように想像力を働かせ、フットワーク軽く駆け回る。その働きが認められて本採用、大号泣。漸く魔法のような映像の世界に、足を踏み入れることができた。
 かなりクセのある雑賀監督の息詰まる現場 映画『罪に罰』、紳士だと噂の横尾監督が起ち上げから作った2時間サスペンスドラマ『美人女将、美人の湯にて~刑事真藤真・湯けむり紀行シリーズ』、人気小説を原作としたアイドル主演映画『みちくさ日記』、原作者肝いりの本格アクション映画『TOKYOの一番長い日』。
 数々の現場をこなし、新しい仲間とも出会う。現場の裏側を見て尚、魔法が解けることはない。同じ夢を見られる、夢の続きが見られる場所に、良助は立っている。…

   ページを捲ってまずびっくり、おお、 サイン本!  作者 地元在住ですもんね、何とゼイタクな。
 面白かったです、いつも通りテンポのいい展開。独特の言葉遣いも健在、子供の頃の良助についての表現 妹に「周回遅れで負けていた」とかやっぱり好きだな、と思いました。「雑用でも誰もやらなかったら滞る」…これ、ちゃんと評価してくれる人がどれだけいるか(泣;;)
 有川さん原作作品の映像化が続きましたもんね、取材たっぷりされたんだろうな、とありありと伝わってくる内容。『図書館戦争』の本の調達方法とか、『空飛ぶ広報室』の騒音の苦労とか、『植物図鑑』の植物採取場面撮影の工夫とか、多分そうだったんだろうな、と裏話をこっそり聞いてる気分にもなりました。スタッフさんへのリスペクトも仄見えましたし。
 ただ、それが透けて見えるだけに、人気原作に対する記述とか、作者自身の作品を褒めているようで、ちょっと引っかかってしまいましたねぇ。何しろ謙譲の美をよしとする美意識が抜けきらないもので(苦笑;)。
 前時代的な価値観を持つ雑賀監督、それでも映画を撮り続けられる、ということはできた作品が素晴らしいものなんだろうなぁ。みんな仲良く、では撮れない作品もあるということかも。それでもあの人は天才だから仕方ないんだよ、って感じでついていく人がいるんだろうな。あの映像の拘り方は、アニメ向きではないんだろうか、と思いつつ。岡田斗司夫さん曰く、画面の支配欲がアニメの方が上だそうなので。

 さて、続編はできるのかな。職場内での恋愛は、私はやめといた方がいいんじゃないかと思ってしまうんだけどな(苦笑;)。