読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ワーキング・ホリデー 坂木司著 文藝春秋 2007年

 いきなり出会った父と子のひと夏を描いた連作短編集。

 エリア1 宛先人不明
 ホストとして働く沖田大和の元に、子供だと名乗る小学生が現れた。名前は神保進、五年生。母親の由希子の名前には嫌というほど覚えがあった。大和には存在も知らせず、一人で息子を育てていたらしい。進は進で、自力で父親がどうやら生きていることや住んでいる場所を突き止めたのだとか。父親を知りたい、と言う進と大和の、夏休みの間だけの同居生活が始まった。
 母子家庭の子供らしくしっかりしていて妙におばさん臭い進のハートを、モテる極意を教えてやると言う一言で掴んだのも束の間、大和は店で客に説教をかまし、平手打ちまで喰わせてクビになってしまう。ホストクラブのオーナーが次に紹介してくれた職業は、宅配業だった。

 エリア2 火気厳禁
 新しい職場に慣れてきた大和。いざ一人で配達と言う段になって、任されたのは何とリヤカー便。こんなのカッコ悪くて息子にも自慢出来やしない。でも間の悪いことに、配達先は進がよく行く児童館の近くだった。 

 エリア3 こわれ物注意
 児童館で知り合った進の友達たちが、車道に飛び出すと言う根性試しをして遊んでいるらしい。危なくないと言う友達、僕は参加していないと言う進。どちらも考えが足りない、と大和は説教する。

 エリア4 代金引換
 大和を名指しで、何回も呼びつける女性客がいる。大和に対してクレームはつけるものの、担当は変えないでいい、と言う。大和の方には身に覚えがなく、でもそれが客を苛立たせていた。

 エリア5 天地無用
 もうすぐ夏休みが終わる。思い出作りに走る大和に、進は腹を立て家出する。夜になっても帰ってこない進を心配する大和。「人に心配をかけること」の罪深さに初めて気付く。…

 これは推理小説じゃないなぁ(笑)。無理してミステリを名乗ることないのに、ちゃんと面白かったから。
 多少設定に無理があるような気はするものの、楽しかったです。すらすら読めました。自分が大切にするものができて初めて、自分を想ってくれた人の気持ちが分かるようになる。進のおかげで大和も成長できた訳で、本当、親になっていく訳ですね。由希子さんと復縁できるかどうかはともかく(笑)。
 相変わらず美味しそうなものてんこ盛りなのも嬉しい。
 装丁も凝ってますね。表紙の、段ボールに貼ってあるガムテープ部分は浮き上がった加工がしてあるし、遊び紙も変わったの使ってる。地味なんだけどよく見ると愛されてるのが分かる、ってのが内容ともあってる感じでした。