読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

宵山万華鏡 森見登美彦著 集英社 2009年

 京都宵山の一日を描いた連作短編集。

 宵山姉妹
 バレエ教室からの帰り、宵山のカマキリが見たい、と姉が言い出した。臆病な妹は引き止めようとするが姉は聞かない。露店が立ち並ぶ通りを歩いているうちに、妹は姉とはぐれてしまう。姉を探して彷徨う妹の前に、赤い浴衣を着た少女たちが現れる。道案内をしてくれるという彼女たちは、妹を連れまわすだけ。一向に送ってくれる気配はない。

 宵山金魚
 乙川は高校時代の同級生。頭の天窓が開いたような奴である。「俺」藤田は昔から乙川には騙されてばかり、今回も宵山を案内すると言いながらほったらかしにされてしまった。藤田の前に金太郎が現れ、竹籠に乗せられ担がれて、「宵山様」の前に連れて行かれる。白塗りの大坊主に般若心経を唱えられ、舞妓に羽子板で脳天を一撃され、流し素麺をすする人たちがいて、信楽の狸と招き猫が交互に並び、金魚の泳ぐ風鈴が鳴り響く中、金魚鉾が現れる。

   …何だか『千と千尋の神隠し』みたい。絢爛豪華ででも猥雑。…乙川さん、すげえ(笑)。

 宵山劇場
 『宵山金魚』の舞台裏、乙川の依頼を受けて丸尾が「宵山様」の計画を練る。小長井が物品調達を受け持ち、演出の山田川敦子に散々振り回される。実は小長井は以前大学の文化祭、演劇部の出し物でも山田川には酷い目にあっていて…。

   …ほのぼの、いい話だなぁ(←どこが!?・笑)。まさしく破れ鍋にとじぶた(笑)。

 宵山回廊
 宵山の日、千鶴は柳画廊の主人に言われて、画家の叔父を訪ねた。叔父は宵山の日に娘を失くしている。娘は千鶴と同い年、七歳のその時、千鶴は従姉妹と一緒にいた筈なのに何も思い出せない。叔父は千鶴に、自分はずっと宵山の日に囚われ、同じ一日を繰り返して娘を探しているのだと言う。

 宵山迷宮
 この間から柳の家に頻繁に、骨董屋の乙川が訪ねて来る。昨年死んだ柳の父親が持っていた筈の、水晶玉を譲ってほしいのだとか。宵山の日、河野画伯を訪ねる柳は、自分が同じ日に囚われ、何回もその一日を繰り返していることを感じる。

 宵山万華鏡
 宵山の日、姉は妹の手を離してしまった。はぐれた妹を探すうち、奇妙な風船が目に留まる。中に水が入っていて、本当の金魚が泳いでいる。あの風船がほしい、妹の分も二つほしい。彼女の願いを聞いて、大坊主と舞妓は「宵山様」の元に彼女を連れていく。…

 幻想小説、になるんでしょうか。一編一編のリンクが嬉しい。『宵山金魚』や『宵山劇場』はいつも通り、ユーモアと勢いたっぷりでくすくす笑って読んでしまう。でも後の作品はどちらかと言うとホラーに近い感じ。京都ならあるかも、みたいな底意地の悪さ(←あれ、日本語間違ってるかな;)が垣間見える。
 金魚の入った風船は私もほしいなぁ。でも貰ったら宵山から抜け出せなくなるんですよね、きっと。
 相変わらず図書館で借りたんですが、これちょっとびっくりしました。表紙をビニールカバーでコーティングしているのは図書館本の常なんですが、そのせいで表紙のきらきらが失くなってしまって、せっかくの装丁が台無しになってる。これは装丁家泣かせだわ、残念。