読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ゆんでめて 畠中恵著 新潮社 2010年

 『しゃばけ』シリーズ第九弾。連作短編集。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 ゆんでめて
 長崎屋の若だんな一太郎は、日本橋の松之助の小間物屋に向かっていた。松之助に子ができたと言うのでお祝いを渡しに行く途中だった。生目神様に似た御仁を見かけてついうっかり後を追ってしまい、弓手へ曲がる筈の所を馬手に曲がってしまった。そして、運命が変わった。
 余計な道草をしたせいで帰りが遅くなった若だんなは、長崎屋近くで起きた火事騒ぎに間に合わなかった。常日頃若だんながいる離れは延焼を防ぐために取り壊され、多くの妖怪がいなくなってしまった。屏風のぞきの屏風も柱の下敷きになり、修理に出したらその先の職人がぽっくり逝って、ただでさえ壊れた屏風、行方は分からなくなってしまった。
 若だんなは最近巷で評判の、鹿島の事触れを探す。その人ならきっと屏風のぞきの居場所を突き止めてくれるに違いない。ところが鹿島の事触れは、他からも追われる身の上だった。何かに憑かれたという娘のお祓いを頼まれたものの、肝心の娘本人は祓われるのを嫌がったから。タチが悪くなったその娘に憑いたのは屏風のぞきではないか、と若だんなは考える。

 こいやこい
 屏風のぞき修理のための職人を紹介してくれたのは、唐物屋小乃屋の七之助だった。
 七之助には嫁取りの話が出ていた。近江の国からはるばる来る許婚は、七之助を試すと言い出した。果たして江戸へ来た娘は5人、揃いも揃って自分は幼なじみの“千里”だと名乗る。誰が本物の“千里”なのか、七之助は若だんなに協力してほしいと泣きつく。

 花の下にて合戦したる
 飛鳥山での若だんな初めての花見に、兄やたちは気合をいれて準備を始める。妖怪たちも大騒ぎ、広徳寺の寛朝や七之助・冬吉兄弟、栄吉や大天狗、生目神様も加わった宴会で狐と狸の化け合戦が始まる中、若だんなたちは異空間に迷い込んでしまった。一人ぼっちで彷徨う羽目になったのは、一体だれの仕業なのか。

 雨の日の客
 お江戸では雨が続いていた。このままでは大水で長崎屋も流されかねないと、若だんなは避難を決意。だが火事場泥棒ならぬ大水泥棒を見かけて、長崎屋に戻ると言い出す。折も折、妖怪ばかりになった長崎屋には、泥棒と、この雨の中知り合ったおねと名乗る大女と、彼女を探す神職とが鉢合わせしていた。誰も、おねが持つ不思議な珠を狙っているらしい。
 
 始まりの日
 あの日、若だんなは弓手へ曲がった。兄の家へ行く途中で、時売り屋だと言う八津屋勝兵衛と出会う。本人が望む時を斡旋していると言う勝兵衛は、「長崎屋の親戚」という時を売ってくれないか、と若だんなに頼み込む。そのまま長崎屋を乗っ取る気ではないかと危ぶんでいると、その勝兵衛自身が手代の佐右衛門に店を乗っ取られ、若だんなに知恵を借りに来た。丁度以前勝兵衛が斡旋した絵師の弟子が、火の描写をするために大きな焚き火を起こした、その現場に佐右衛門も町名主もいると言う。不安にかられ、若だんなは焚き火の場所に走る。…

 紅子さん、屏風のぞきが、屏風のぞきがぁぁっ!
 ……と思った方、多かったに違いない(笑)。
 時を遡ると言うちょっと変わった趣向のシリーズ第9弾。ゆんで、って弓手のことだったんですね~。“めて”が馬手と言うのも初めて知りました。
 馬手に曲がった若だんなには何が起こったのか、ちょっと知りたいなとも思いつつ。若だんなには別れもなかった代わりに、新しい出会いも失くしてしまった訳ですね。何かちょっと寂しいかも。
 しかし、長崎屋がお金持ちでよかった。あれだけ妖怪たちが食い荒らしてもびくともしないって、大したもんだ(笑)。