読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ホリデー・イン 坂木司著 文芸春秋 2014年

 『ワーキング・ホリデー』スピンオフ作品。

01 ジャスミンの部屋
 三月の冷たい雨の夜。ジャスミンは行き倒れのおっさんを拾った。吊るしのスーツにそこそこのコート、ウォーキングシューズという出で立ちに興味を引かれるジャスミン。家族も家も整理した、海外に井戸に掘りに行くという男。嘘と見破りながら、ジャスミンは男を一晩家に泊める。

02 大東の彼女
 大東の母親は七年前事故に会って以来、リハビリセンターに通っている。父親や兄と代わる代わる送り迎えをしながら、大東は気のいい母親を見守る。不幸になるのは簡単だけど、もうキリがないっしょ。

03 雪夜の朝
 ホストの雪夜を指名する、推定体重80キロの女。商売だからつきあっているのに、店以外で偶然出会った彼女は、雪夜を「コドモで『カッコいい僕』に縛られている」と指摘する。

04 ナナの好きなくちびる
 小学校から大学まで、ずっと一緒の学校に通っていたナナ。両親との折り合いも悪く、「生きていなかった」彼女に初めてできた友達がマキだった。甘えるのが下手なナナは、マキが受験勉強で忙しくなっても自分の気持ちを主張することができない。他に寂しさを紛らわせる手段がわからないまま、ナナは男と付き合い始める。

05 前へ、進
 父親が生きていることを知って、「会いたい」と進は思った。男らしさはどんなものかを知りたい、と思ったから。母親に連絡をつけてもらって、ジャスミンに背中を押して貰って、進は大和に会いに行く。

06 ジャスミンの残像
 目の前で自転車事故に会ったヤマトを拾ったジャスミン。生意気で頑固で子供っぽくて、でも憎めないヤマトを自分の店で働かせることにする。いずれ、彼を見送る日が来ることを覚悟しながら。…


 坂木さんと辻村深月さんって、実は作風似てるんだろうか、とちらっと思った一冊。『04 ナナの好きなくちびる』を読んだ際、ふと頭をかすめました。この女の子同士の依存しあうような関係、何だか似てるなぁと思って。その他の短編ではそれは思わなかったんですけど。
 あとがきによると、作者自身気が付いていなかった登場人物の機微について、映画監督に指摘されたそうで。これこそ解釈、というものなんだろうなぁ。しかも幸せな。
 それにしても、ジャスミンはいいオンナだ、うん。