読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

名前探しの放課後 上・下  辻村深月著 講談社 2007年

 ネタばれになってるかな、すみません;

 藤見高校一年生・依田いつかの意識はいきなり三ヶ月前に戻された。来年一月までの記憶があるのに、今日の日付は10月11日。姉の子供はまだ産まれていないし、撤去されている筈の駅前のパブの看板も掛かったまま、別れた恋人・豊口綾乃ともまだ付き合っている状態。何故こんなことになったのか訳がわからず、とにかくいつかはクラスメイトの坂崎あすなに相談する。ろくに喋ったこともない相手だが、数少ない同じ中学出身の彼女が、中学の文化祭でタイムトラベルについて発表したのを覚えていたから。小説や映画では主人公の心残りがタイムスリップの契機になることが多い、と言う彼女の言葉を聞いて、いつかは本題を切り出す。
 実はこの三ヶ月で同学年の生徒が一人自殺する。その日が終業式12月24日だと言う日付まで覚えているのに、名前や方法がどうしても思い出せない。起きると分かっているのに見殺しにするのは後味が悪い、そいつを探すことを手伝ってくれないか。
 協力すると言ってくれたのは他に三人。陸上部・長尾秀人、その彼女礼華女子校の椿史緒、5組の委員長・天木敬。五人で心当たりを話し合ううち、陸上部のエース・小瀬友春が同じ二組の河野基をいじめているらしい、と情報が入る。
 東京からの転校生、鉄道オタクで勘に障る喋り方をする河野基。こっそり遺書や自分の死亡記事を書く姿を見て、「自殺者」は彼ではないか、と推測する。暴力を振るわれたり体育倉庫に閉じ込められたり、いじめはエスカレートしていく様子。五人は河野に近付き、いじめの直接の原因となった河野の泳ぎ方を矯正することを提案する。
 河野を教えているうち、いつかの過去、あすなのコンプレックスが浮き彫りになる。ターンミスによる怪我から競泳選手の道を自ら閉ざし、女の子をとっかえひっかえ次々付き合うようになったいつか、水泳にしろピアノにしろ、できないことはすぐ諦めて、自分を育ててくれた祖父に格好悪い所を見せたくなかったあすな。河野を通じて二人も自分と向き合い、コンプレックスを克服していく。
 Xデー当日、クリスマス・イブ。あすなの祖父の店「グリル・さか咲」でのクリスマスパーティに、小瀬を克服した河野も参加した。あすなも椿とピアノを連弾、楽しいまま無事にその日は終わった。年が明けていつかの甥っ子が産まれ、1月12日三学期の始業式。甥っ子の名前や出されない「グリルさか咲」の二号店など、いつかの以前の記憶と少しずつ食い違う現実の中、あすなの祖父が倒れたと言う連絡が入る。…

 また、会えたね。
 …ってスペイシーハグする訳ではありませんが(分かる人だけ笑って下さい;)。
 よかった、二人ともいい子になってる。実はね、結構早い段階でもしかしてそうなんじゃないかな、ってのは思ってたんだよ。確信したのは「ピアノが得意な松永くん」が出て来た時だったけど、ラストの大落ちに持ってくるとは思わなかった。これは辻村さんの他の作品読んでること大前提ですね、となるとこの作品だけで楽しめるかどうかがちょっと疑問。読んでいればもう爽快!なんですけど。
 図書館で予約した時、「上下巻同時に借りたい」と条件を付けたら司書のお姉さんにちょっと嫌な顔をされました。「上、下の順番に回すようにしますから別々にしませんか?」「時間かかりますよ」。…それならわざわざカウンターで申し込んでる意味ないんですけど。「いや、待ちますから上下巻同時で」。だって辻村さんの本ですよ、読み終えたら最初の方読み返したくなるの分かってるもの。
 探してる生徒は基くんじゃない、と言うのは既成事実(笑)。さぁ、どこまで騙してくれる、と楽しみに読みました。
 みんな役者だなぁ(笑)。最初の方は少々もたつきましたが(ジャスコのくだりは要るかなぁ?)相変わらず後半追い上げて来ますね。忙しいのにバイトをし、バイクの免許を取ろうとするいつかの行動、面食いの理由、基の鉄道オタクのエピソード、椿のノート、小瀬の校則違反・バイク通学。細かいことまで繋がって行くのは快感です。水泳にしろピアノにしろ、出来すぎじゃないかなと思いつつ、やっぱり泣いてしまいました。今回は下巻半分過ぎ位から家で読んだので、心置きなくぼろぼろと。…さすがに電車では読まない方がよさそうだ、ってのは学習してますから(笑)。
 また次の作品で天木くんの昔の彼女の話とか出てくるのかな。『ダ・ヴィンチ』か何かで辻村作品の年表作って欲しいなぁ。←自分でしろよ、って感じですが(笑)。