読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

夜の光 坂木司著 新潮社 2008年

 天文部に所属する4人が過ごした、高校生活最後の一年の春夏秋冬。

 季節外れの光
 ジョーこと中島翠の物語。
 ジョーが天文部に入ったのは、活動がとにかくユルかったから。大学に進学したいジョーの意思は、「女は学問する必要がない」という家族の価値観に阻まれていた。いい成績を取って推薦で大学に進むしかないジョーには、部活は勉強の邪魔でしかない。
 4月、新入生を勧誘するため一人ずつ残っていた部室の部屋から、裏の池に光が見えた。今の季節にホタルがいる筈はない。天体観測で学校に残った夜、四人はその光の正体を突き止める。

 スペシャ
 ゲージこと青山孝志の物語。
 夏休み、合宿。話題になったのはブッチこと部長・黄川田のバイト先での出来事。ピザの宅配を頼んでくる奇妙な人物が二人いる。一人はやたらめったらトッピングを頼む男、もう一人はシンプルなピザばかりを頼む女性。彼女はいつもマンションのドアの前で待っている。その行為にはどんな意味があるのか。

 片道切符のハニー
 ギィこと安田朱美の物語。
 アルコールに溺れる父とそれに逆らえない母を、ギィは心底見限っている。高校を出たら独り立ちをしようと、バイト先を選んで調理免許の資格を取ったほど。 
 秋、学祭にて、ジョーがサッカー部のバザーで買ったセーターは、手芸部の女の子の不興を買ったらしい。何故いわれもなく嫌われてしまったのか、4人で真相を突き止める。

 化石と爆弾
 ブッチこと黄川田祐一の物語。
 代々農家のブッチの家は、尊大で支配的な祖父に誰も逆らえない。祖父の目を盗んでバイトをし、祖父から逃げ出した若い叔母に苦い恋をする日々。そして、高校卒業後の自分の進路も、心密かに決めている。
 二月、学校内を獣の死体をもってふらふらする女学生の姿が目撃された。焼却炉を探している彼女は、一体何を燃やそうとしているのか。

 それだけのこと
 一年後。志望していた大学に入り、女子寮で過ごすジョーは、未だに親からの束縛と闘っている。ゲージは地元の大学に通い、ギィは遠くの町の飲食店で働いている。ブッチは養蜂家に弟子入りして、やはり家を離れて蜜蜂と旅する毎日。ブッチに時間ができた4人は、久しぶりに天体観測合宿をする。…


 読み始めて驚きました。この作者の雰囲気、こんなに辻村深月さんと似てたかしら、って。
 面白かったです。謎解き自体は「そうかなぁ??」と思った所もありましたが、主人公4人の性格や行動に好感が持てて、気持ちよく読めました。特に学祭のジョーの行動、セーターの作り主の彼女への言葉には、「ああ、この子いい子だなぁ」としみじみ思ってしまった。
 惜しむらくは5話目。これは天文部顧問田代の話にするべきではなかったかなぁ。例えば卒業式の日の様子とか、ゆるくて放任主義の田代の、裏の視点から描かれていたら、また感じの違った作品になっていたのではないかしらん。
 あと、自分達の代で潰れてしまうだろう天文部への思い入れがこれだけ、ってのもなぁ。こんなに罪の意識がないものかしら。今まで続いていたものが自分達で終わってしまう、ってこんなにあっさり「仕方ない」で終わらせられるものではないと思うんだけど。
 いつも通り、美味しそうな物も満載でした。野外料理でこれだけできたら、ねぇ(笑)。