読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

荒野 桜庭一樹著 文藝春秋 2008年

 恋愛小説作家を父に持つ少女・山野内荒野の、12歳から16歳までを描いたもの。
 2005年・2006年ファミ通文庫から出版された『荒野の恋 第一部』『荒野の恋 第二部』に加筆修正した作品。

 山野内荒野は今日から中学一年生。鎌倉の日本家屋に、恋愛小説作家の父親と住み込み家政婦の奈々子さんと三人で暮らしている。初登校の日電車に飛び乗った荒野は、セーラーカラーを電車の扉に挟まれてしまう。急場を救ってくれたのは文庫本を片手に眼鏡をかけた男の子。どうやら同じ中学の一年生らしい。同じクラスにまでなったのに、彼・神無月悠也は何故か荒野に冷たくあたる。ゴールデンウィークが終わって、荒野はようやくその訳を知る。悠也の母・蓉子は荒野の父・正慶の再婚相手だった。結婚が決まって正慶の担当編集者の女性は泣きじゃくり、奈々子さんは家から出て行く。悠也は一人離れで過ごし、やがて留学を決意する。

 中学二年生、荒野はにきびに悩んでいる。アメリカに留学中の悠也とは文通中、荒野の友人二人・華やかな美少女田中江里華には地下組織(ファンクラブ)ができたし、活発なショートヘアの湯川麻美には年上の彼氏ができたようす。荒野もクラスメイトの阿木くんに告白されて動揺、ひどい振り方をして相手を傷つけてしまう。義母の蓉子さんに子供ができてお腹がどんどん大きくなって行く中、女の人が乗り込んできたり担当だと言う女の人が荒野を連れに来たりする。
 そして中三。悠也が帰ってきた。

 高校一年生。妹・鐘が生まれた。悠也は東京の進学校に進学、寮生活をしていて、時々荒野とデートする。正慶の小説が賞を獲り、荒野の身辺まで慌ただしく華やかになる日々。だがやがて、蓉子は鐘を連れて出て行ってしまう。…

 ファミ通文庫って何となく男の子向けレーベルのような気がしてたけど、これは少女漫画だわ。自分の周り10m以内の出来事を丁寧に描いてる。ただ、父親が父親なだけに大人の世界のどろどろも入っていて、お父さん節操なさすぎだよ。少なくとも荒野の小学校の先生には手を出しちゃいけないなあ(苦笑;)。一応自分の著書を娘には見せたくない、と言う良識(?)はあるようですが、次々自分が関係した相手を作品にする、ってのはなぁ; 相手もそのことは承知の上で付き合ってるんでしょうか。将を射んとせばまず馬を射よ、てなもんで荒野に取り入ろうとするのも出てくるし。
 美味しい食べ物、綺麗な衣装。『赤毛のアン』の昔から、少女小説には必須事項(笑)。そう言えば桜庭さん、着物お好きなんでしょうね、直木賞の授賞式やその後のTV出演でも着物でしたね。その前の森絵都さんが確かオレンジ色のキャミソールドレス着てらしたのと対照的だなぁ、と思った覚えがあります。
 お父さんの受賞前夜のどたばたした様子なんか、多分参考にしたんでしょうね(笑)。
 相変わらず名言目白押し。「スレンダーは秀才、巨乳は天才」。…成る程(笑)。
「……恋って つまりは所有欲、だと思う」。特に正慶さんを巡る女の戦いはそうでしたね。
「誰かに誉めてほしい料理は、おいしくても、どこか苦い」…反省します(苦笑;)。
 江里華の気持ちを知っても素直に友達でいられる荒野、凄いなぁ。あれは蓉子さんのフォローも良かったからだけど。
 何か、『赤朽葉家~』の前身を見た気分です。