読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ふちなしのかがみ 辻村深月著 角川書店 2009年

 辻村深月短編集。
 ネタばれになってるものもあります、すみません;

 踊り場の花子
 三階から二階にかけての階段を一人で掃除していた青井さゆりは、「階段の花子さん」に出会う。
 夏休み、日直で学校に来ていた教諭・相川英樹は、後輩の教育実習生・小谷チサ子の訪問を受ける。音楽室に忘れ物をした、と言うチサ子との話題は「学校の七不思議」から、この間渓谷で死体が見つかった青井さゆりの話になる。さゆりは母親から虐待を受けた上、クラスで苛めにもあっていたらしい。

     チサ子の正体にはなるほど、でした。細かい伏線もあって、何だか推理小説っぽくて面白かった。
     事件自体は気持ちのいいものではなかったですけど;;

 ブランコをこぐ足
 倉崎みのりは大きくブランコをこいで、その勢いのまま飛び出し、全身を強く打って死んでしまった。クラスメートが口々に「みりちゃん」について語る。今年になってつきあう友達も髪型も変わって、クラスの「上の方」に属するようになったみのり。「キューピッド様」の遊びの中心になり、テレビなどの流行りものに気を遣うようになった彼女を、元の親友は「必死でかっこ悪い」と思っていた。

     結局みのりが飛び出すにまで至った理由が今イチぴんと来なくてですね;;
     ある程度周りにあわせないとやっていけない、と言う女子社会の狭さは身につまされました;;
     大人になったら「個性」で片づけられることなんですけどね。

 おとうさん、したいがあるよ
 山中の集落に住む祖母が認知症に侵された。部屋中に衣服が散らばるその状態に、週末、つつじとその両親が掃除に通うことになる。犬小屋の中、押し入れの中、出て来たのは数々の死体。散々苦労して後始末したのに、翌週行くとまた死体が見つかる。なのに両親はそのことをまるで覚えていないらしい。

     連想したのは瀬川ことびの短編。「おいおいおい」思わず突っ込みたくなるゆるさが
     妙にユーモラスで共通してる、と言うことで。
     でもごめん、軍配は瀬川さんの方に上げます。あっちは「笑える」まで行ってた。
     死体はどこから集めて来たのか(しかも一週間で!)、そもそも本当にあったのか。…わからんぞー;
  
 ふちなしのかがみ
 香奈子は高幡冬也に恋をした。夜毎彼がバイトでサックスを吹くジャズクラブに通う。知り合ったサキとマイコに教えてもらった『鏡占い』を試すと、一瞬小さな女の子が映った。冬也によく似た目許の少女は、きっと自分と冬也との子に違いない。想像の中で、少女の存在はどんどん大きくなる。冬也の血を引いているのに音楽の才能のない我が子。このままでは冬也の気持ちも離れてしまう。香奈子は少女の存在を消そうとする。

     これも後味悪いな~。香奈子の正体には成程、って思いました。

 八月の天変地異
 小学五年生の夏、「俺」シンジは喘息持ちのキョウスケと共に、クラスで仲間はずれになっていた。キョウスケはともかく、俺はサッカーも上手いし足も速い。こんな扱いを受けるいわれはない。シンジは思わず架空の親友「ゆうちゃん」を作りだしてしまう。こんな田舎じゃなくて、麓の町の小学校に通っているサッカー少年。頭もよくてお金持ちで、最新のゲームやマウンテンバイクを持っている。だがクラスメイトは嘘を見破り、シンジの立場はますます悪くなるばかり。そんな二人の目の前に、「ゆうちゃん」と名乗る少年が現れた。彼は今までシンジが吐いた嘘をそのままなぞった生い立ちを語り、シンジの親友だと胸を張って宣言する。彼は一体誰なのか、疑問を持ちながらもシンジはキョウスケと二人、「ゆうちゃん」との夏休みに耽る。…

     ちょっとこれはどうなることかと思いましたね。「ゆうちゃん」が出て来て、ここからさらに
     ホラーになるかとどきどきしました。…「いい話」になったか~。


 ホラーだな~。辻村さん、子供のいじめについて、色々拘ってるな~。大人になって思い返すと、その世界の狭さにくらくらするんですけどね、その時の当事者にとっては辛いもんなぁ(苦笑;)。
 後味のいい話はあまりなかったですね。「結局あれは何だったんだ?」と言う話もあったし。…とか言うとホラー全否定になりかねないな(苦笑;)。
 『八月の天変地異』で連想したのは中島らも『こどもの一生』。みんなで作りだした架空の「おっちゃん」が現実に現れるホラー。これ、舞台中継したTVを見たんですが、古田新太升毅立原啓裕牧野エミわかぎゑふ etc.という豪華キャスティングで、とにかく面白かったのを覚えてます。後に小説にもなりましたが、断然舞台の方が上だったなぁ。舞台とか映画とか、別のメディアの小説化って原作者でも難しいんですね。容赦のなさが半端なくて、怖くて笑えて面白かった。その点、辻村さんの方がソフトでしたね。
 多分、自分の中での辻村さんへのハードルが上がってます。面白くなかった訳じゃないんだけど、ちょっと物足りない。辻村さん、乗り越えてくれ! …勝手なこと言ってるなぁ(苦笑;)。