読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを カート・ヴォネガット・ジュニア著/浅倉久志訳 ハヤカワSF文庫 1982年

 米国での初出は1965年。

 聞きたまえ! 億万長者にして浮浪者、財団総裁にしてユートピア夢想家、慈善事業家にしてアル中である、エリオット・ローズウォーター氏の愚かしく美しい魂の声を、暖かくも苦い愛のメッセージを。金がすべてを支配する現代社会で、隣人愛に憑かれた一人の大富豪が、その限りない愛と、限りある金とを恵まれぬ人々のために分け与えようとしたとき、いったい何が起こったのか……? 現代最高の作家が贈る感動の名作。
(表紙裏の惹句をそのまま引用しました)

 学生時代、有名な作品はそこそこ読んだつもりでした。一応抑えておかないとね、ってな感じで(…今にして思えばイヤな読書の仕方だったなぁ)。そう言えば、カート・ヴォネガット・ジュニアは読んでなかった。読みたかったのは『タイタンの妖女』だったのですが、書架に並んでたのがこの作品だったので、まぁいいや、と手に取りました。
 …やっぱり、若いうちに読んどけばよかった。何かねぇ、辛いんですよ。大金持ちである自分にコンプレックスを抱く主人公エリオット、それに同調して心身共に疲れ切り、離婚していく妻シルヴィア、たかってるのか頼ってるのか分からないローズウォーター郡の人たち。昔なら勢いで笑い飛ばせてたことに引っかかってしまう。『ER』のカーター君も、一時期似たようなことで悩んで、結局詐欺にあってたよなぁ。何度も挫折しそうになりました、読んでる間に恩田さんや梨木さん、畠中さんの予約本は回ってくるし(笑)。
 ラスト近辺でエリオット自身のいい加減さや周囲の人たちの善良な思惑が出て来て、何とかラクになりました。
 連想したのは『セツアンの善人』(私は『シェン・テとシュイ・タ』って題名の方が馴染みがあるんですが。台本読んで、「これ上演するには無理ないか?」と思った記憶が…)。優しい雇い主には付け上がり、厳しい雇い主には反発する。世の中、真面目な方が損するような…。