読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

道徳という名の少年 桜庭一樹著 角川書店 2010年

 連作短編集。
 ネタばれかなぁ、すみません;

 Ⅰ、2、3、悠久!
 町で一番の美女が父なし子を次々に産み落とした。どの子も母親そっくりの薔薇のかんばせを持つ女の子、上からⅠ、2、3、悠久と名付けられた。やがて母親は旅の商人と恋に落ち、四人を捨てて町を出て行ってしまう。四人が町の娼館で大輪の花を咲かせた頃、母親が男の子を連れて戻って来る。悠久は弟を可愛がり、やがて弟との間に子供が産まれる。薔薇のかんばせに恵まれた、しかし溶けたバターのような黄色い目玉を持つ男の子。四人は自分たちと母が生涯戦ってきたものの名前を子供につける。――道徳(ジャングリン)、と。

 ジャングリン・パパの愛撫の手
 雑貨屋の娘には生まれつき父親がいなかった。だから向かいに住む美しいジャングリン坊やよりも、父親の方が気になった。世の中が不穏に傾き、戦争が始まって、ジャングリンが招集された。狂気のままに母親は死に、ジャングリンは両手を失って帰って来る。ジャングリン・パパはその存在を失くしたかのようにジャングリンの手の代わりを勤めた。ジャングリンが雑貨屋の娘と結婚した後でさえ。

 プラスチックの恋人
 ジャングリーナは父親に似た美しい顔立ち、黄色い目玉。腕のない父親に溺愛して育てられた。十七の時、ジャングリーナは父親を殺して町を後にする。都会に出て、ジャングリーナは歌をうたいはじめる。夜毎プラスチックの恋人を抱きしめながら。

 ぼくの代わりに歌ってくれ
 ジャンは戦場にいる。今は醜く太ってしまった元スーパースターを父親に持つ。恋はまだしたことがなかったが、毎日ラヴレターを書いていた。誰に宛てることもない、ただうつくしい愛の言葉を書き連ねていた。

 地球で最後の日
 ミミは老いたるロックスター、ジャングリーナさんの遠い親戚なのだとか。それを確かめようと、友人クリステルと共に、ジャングリーナさんに会いに行く。蜀黍粉の麵麭とガムとミネラルウォーター、化粧道具に携帯音楽端末だけ持って、いまわの際のジャングリーナさんに。…

 …売れると判ってたらこう言う本も出せるんだなぁ。
 後半二編はムック本「桜庭一樹~物語る少女と野獣~」で読んでましたね。こういう前半があるとは思いませんでした。その時は確か、海外小説のようだと思ったんですよね。私あまり読まないんですけど、レイ・ブラッドベリとかの雰囲気と似てる気がして。でも前半が加わったら、何だかイメージ違いましたね~。やっぱり桜庭さんだなぁ、としか言いようがない。
 結構贅沢な作りの本なんですが、…イラスト、あまり関係がないような…とか言っちゃ駄目なんでしょうね、すみません;