読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

the TEAM~ザ・チーム 井上夢人著 集英社 2006年

 連作短編集。

 『招霊 おがたま』:
 盲目で難聴の中年女・能城あや子は霊導師。TVでお笑い芸人と共に視聴者の悩み相談をしている。当たると評判のあや子の霊視には、実はからくりがある。優秀な調査チームが事前に相談者の身辺を調べているのだ。チームと言ってもメンバーは三人。あや子のマネージャーも務める鳴滝昇治、コンピューター関係を一手に引き受ける藍沢悠美、実動担当の草壁賢一。
 今回の相談者は桂山博史。だが桂山自身は霊能力を全く信じず、あや子をインチキ霊能力者として告発するのが目的らしい。相談内容の心霊写真も自分ででっち上げていた。草壁と悠美は十年前、高校生だった桂山の妹が妊娠を苦に飛び降り自殺していたことを突き止め、TV収録時に新たな事実を提示する。

 『金縛 かなしばり』:
 今回の相談者は杵淵珠絵。夜な夜な金縛りに悩まされ、実際痣や切り傷までできると言う。
 悠美がこの仕事を始めるきっかけとなった出来事を挟みつつ、事件が解明される。

 『目隠鬼 めかくしおに』:
 今回の相談者は松原三智子。職場の友人に無理矢理連れられてやってきた。偽名を使い、過去を捨てて生きる三智子には、七年前幼稚園の遠足に参加させた息子を、バス事故で失った負い目があった。…
 …これはちょっと無理がないかなぁ、と思ったり。旦那、もっと真剣に奥さん探せよ;

 『隠蓑 かくれみの』:
 雑誌記者・稲野辺俊朗はあや子のトリックを暴き出したい。大垣と名乗ってあや子に接近するが、あっさり正体を見抜かれる。以前あや子に相談した女性・品田澄子が、アドバイス通り亡夫との思い出の地・輪島に行ったのに、その地で毒物混入事件に巻き込まれて死んでしまった事実を突きつけて迫るが、するりとかわされ、自身の子供との不和の原因まで指摘される。

 『雨虎 あめふらし』:
 今回の相談者は津野田葎子。自宅の地下室で呻き声が聞こえると言うもの。草壁は津野田邸を隅々まで調べるが、不審な所は見つからない。だが、その部屋では確かに、北原白秋の『雨』の歌が聞こえて来た。

 『宿生木 やどりぎ』:
 次回の相談予定者だった恩田光枝が自殺した。母子家庭で、17歳の息子を残しての自殺に悠美は納得が行かない。空いた時間で独自に調査を進め、光枝がやっていた内職に疑問を抱く。

 『潮合 しおあい』:
 あや子の昔を知る五十嵐匡弘が現れる。非合法の盗撮ビデオから草壁の不法侵入を知り、あや子のからくりに気付いて脅しをかけてくる五十嵐。草壁・悠美の二人はあや子の視力や聴力を失う原因となった火薬事故を聞き、過去の経緯を調べ直す。それは鳴滝の苦しみを軽減する事にも繋がった。

 『陽炎 かげろう』:
 盗撮ビデオが稲野辺俊朗の手に渡る。いよいよあや子を追い詰められる、と喜んだのも束の間、ある日突然あや子たちは姿を消す。全ての証拠のテープと共に…。…

 久々の井上夢人作品です。ウェブ上で書いてらっしゃるのは知ってたんだけど、やっぱりパソコンの画面では小説は読みにくくて敬遠してました。久しぶりの紙媒体、嬉しがって読み始めて思いました。
 この安定感はすごいよ…!
 面白いことが確実ってのはいいなぁ! もうしみじみ思いました。安心して話に身を委ねられる。やっぱり私、井上さん好きだわ。
 自身が持ってるコンピューターの知識もフル活用、多少エピソード古かろうが、回想シーンとして使えば問題なし!(笑)
 この作品もシリーズ化することなく、この一冊で終わるんだろうな。この潔さも私は好きです。