読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

退屈姫君伝 米村圭伍著 新潮社 2000年

 陸奥磐内藩五十万石の末姫、めだか姫は十七歳。
 父親が決めてきた結婚相手は四国讃岐風見藩、たった二万五千石の藩主時羽直重公。
 風見藩江戸上屋敷に輿入れし、夫婦仲も睦まじく幸せに暮らしていたが、新婚生活たった三月で直重公は参勤交代、風見藩へ帰ってしまう。江戸屋敷の留守を頼まれためだか姫。この退屈を紛らわすため屋敷内の探検に乗り出したが、直重の弟・直光に連れられて、屋敷の外まで抜け出すことに。どうやらこの小藩には、この抜け道も含めた七不思議ならぬ六不思議があるらしい。
   壱、「抜け穴はありやなしや」
   弐、「中間長屋の幽霊」
   参、「廊下の足音すがたは見えず」
   四、「井戸底の簪」
   五、「下は築地で在所が知れぬ」
   六、「ろくは有れどもしちは無し」
 この六不思議を解き明かそうと、めだか姫は立ち上がる。ただの退屈しのぎの筈だったのに、やがて磐内藩と風見藩との密約書探しにまで騒ぎは発展。それを嗅ぎ付けて風見藩を取り潰そうとする田沼意次。将軍徳川家治まで巻き込んで、めだか姫絶体絶命。
 屋敷の外で出会った釣独楽使いのくのいち・お仙、お仙の上司・お庭番の倉地政之助と義弟の直光。頼りになる仲間を得て、めだか姫は風見藩の一大事を無事乗り切れるか。…

 前作『風流冷飯伝』に出てきた一八の妹・お仙が大活躍。それにしても風見藩、田沼意次にえらく目を付けられたもので(笑)。
 前回同様、軽妙な語り口。どんな危機が訪れようと絶対ハッピーエンドだよこれは、と安心して読めてしまう。相変わらずかなり下世話なところも無きにしも非ず。…まぁこれも「仕様が無いねぇ」で済みますが(笑)。
 めだか姫が無邪気で利発で、まさしく「姫」。田中芳樹氏が『アルスラーン戦記』に、王の資質として「名馬を操る技術があればいい、名馬ほど早く走れる必要はない」と書いてたのを思い出しました。…そう言えばこのくだりは、アニメ『起動戦士ガンダムSEED』でも思い出したっけ。ラクス・クラインがにっこり微笑んで、「何とかなりませんか?」と部下に尋ねたシーンは感動したなぁ(笑)。
 …しかし、家治公ってもしかして名君だったのでしょうか??