読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

褐色の文豪 佐藤賢一著 文藝春秋 2006年

 大デュマことアレクサンドル・デュマの半生記。
 フランス革命時の将軍「黒い悪魔」ことアレクサンドル・デュマを父に持ったデュマ二世は、父に限りない尊敬の念を抱きつつ、ひきかえ自分は何をしたらよいのかとフランスの片田舎ヴィレル・コトレで燻っていた。スウェーデン貴族の末裔である友人ルーヴァンの感化を受け、ハムレットの芝居に啓示を受けて、劇作家になることを決意、恋人に振られた事にも後押しされて、パリへ出て文学修行に励む。持ち前の明るい性格、人懐っこさと積極性が人脈を広げ、やがて劇作家としてデビュー。フランス革命後、識字率の上がったフランスで次々に小説を発表、盗作疑惑で裁判にかけられながらも、大小説家として成功を収める。湯水のように大金を浪費し、次々と愛人を作るデュマ。だが常に戦場の英雄であった父には敵わないと言う強迫観念に追われ、他国の革命にまで関わり始める。…

 「モンテ・クリスト伯」や「三銃士」のデュマが黒人とのクォーターだった、てのは佐藤氏の前作「黒い悪魔」読むまで知りませんでした。また、こんなにも波瀾万丈の人生だったとは! 億万長者から一文無しですよ(笑)。こういう「いつまでたっても子供」な男を書かせると佐藤さんの右に出る人はいませんね。どこまで史実なんだろう、と疑問に思うほどキャラが立ってる。とにかくエネルギッシュで、振り回される周囲は確かに迷惑かも(笑)。
 ビクトル・ユゴーと同い年で交友があった様子、性格の違いが作品にも現れてて妙に納得。ユゴーがデュマにコンプレックス抱くのもわかる。あれ、でもユゴーメーテルリンクから僻まれてなかったっけ? …覚え違いだったらすみません;
 私のフランス革命の知識はベルバラで止まってたので、その後のナポレオンの台頭から流刑、王制への揺り戻しや立憲君主への流れ、ナポレオン三世の出現と独裁の始まり、そして失脚…って辺りの歴史は知らないことだらけで面白かったです。