読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

GOSICKs Ⅲ―ゴシックエス・秋の花の思い出― 桜庭一樹著 角川文庫 2011年

 初出は2007年、富士見ミステリー文庫
 外伝連作集。

 第一話 「純潔」――白い薔薇のおはなし -AD1789 フランス
 大陸横断列車<オールド・マスカレード号>から帰って来て、風邪をひいたヴィクトリカ。彼女のお見舞いに、久城は花とお菓子と書物を持って、迷路の奥の彼女を家を訪れる。
 持ち込んだ書物はとある乳母の手記。革命時、フランスの伯爵の家で、父親の政治の道具に使われるため鋼鉄の貞操帯をつけられたまま民衆に捕まった美しい令嬢が断頭台の露と消えた話。しかしヴィクトリカは、その裏に隠された真実を見抜く。

 第二話 「永遠」――紫のチューリップのおはなし -AD1635 オランダ
 まだ熱が引かないヴィクトリカのために、久城は二冊目の手記を持って行く。
 チューリップ取引が熱狂的に行われていたオランダで、居酒屋の主人が出会った、エキゾチックな風貌の娘と、その娘と恋仲になった若者の話。娘の父親に認められようと、若者は当時珍しかった紫のチューリップ・フィセロイを手に入れる決意をする。船に乗って東方へ旅立ち、フィセロイの球根をたっぷり乗せたその船は、だが嵐に会って沈んでしまった。しかしヴィクトリカは、その手記から別の結論を引き出す。

 第三話 「幻惑」――黒いマンドラゴラのおはなし -AD23 中国
 にんじんのグラッセを作りながら、久城は次のおはなしを読み聞かせる。
 モンゴルから来た美しい娘が、義理の兄を国王にするため、武将となって懸命に働く。時には伝説のマンドラゴラで媚薬を作り、跡取り娘の姫に飲ませて、義理の兄に好意を抱かせる。20年の後、全てが上手く行った時、娘はからだに紅色の模様を散らせ、幻覚の中死んでいく。マンドラゴラの呪いを受けて。しかしヴィクトリカは、呪いなどないと言い切る。

 第四話 「思い出」――黄のエーデルワイスのおはなし -AD1627 アメリ
 ドイツからアメリカへ移住して、エーデルワイスを育てて莫大な財をなした女実業家の話を聞かせる久城。
 妹の娘を押し付けられた厳格な姉は、美しい姪っ子を厳しく躾ける。私生児であるというハンデを隠すため、姪と恋人の仲まで裂いてアメリカに移住。誰も知りあいのいない場所で、姪は恋人に貰ったエーデルワイスの花を育て、その花を売って大成功を収める。商才に長けた娘だと言う伯母の評価に対し、ヴィクトリカは彼女は情熱的な娘だと説明する。

 第五話 「花びらと梟」
 庭園の迷路を通ってヴィクトリカを訪ねる久城を見て、彼女の家を付き止めようと、アブリルは勇んで迷路に突入する。でもやっぱり迷って立ち往生する羽目に。そんな中いきなり現れたヴィクトリカに、アブリルは自分の伯父の思い出話をする。
 世界的冒険家を父に持つジュニアは何とかそれを追い越したいと、ロンドンの地下鉄の開通を決意する。順調には行かない工事、ジュニアの評判も地に落ちる中、妻のデイジーだけは彼を信じながらも病に倒れ、結局帰らぬ人となる。それから十年が経ったいよいよ開通の日、トンネルの中には何時の間にやら真っ赤なデイジーが一面零れ落ちていた。伯母の幽霊の仕業だ、と言い張るアブリルに、ヴィクトリカは幽霊なんていないと言う。…

 何だか楽しかったなぁ、この作品集。そうか、安楽椅子探偵はもともと好きなジャンルだったんだ、と改めて気が付きました。…どこまでインドアなんだ、私(苦笑;)。ミステリとしてはどうなんだろう、という話もあったんですけどね、でも花とお菓子と不思議な話、ってったらやっぱり魅力的です(笑)。
 ラストではコルデリアも登場。ちゃんとヴィクトリカを見守っていた訳ですね。さて、次は<王宮のココ・ローズ殺人事件>、アニメを見る限り、これも安楽椅子探偵の部類に入りそうなので楽しみです。