読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

革命の終焉 小説フランス革命Ⅻ  佐藤賢一著  集英社  2013年

 最高存在の祭典、ロベスピエール一派への反感、そして――ロベスピエールの末路。
 変革は、なしえたか。使命は果たしたか。
 フランス革命を描く巨篇、ついに完結!
                                  (帯文より)


 盟友ダントン、デムーランの処刑以降、革命に疲れた感のあるロベスピエール。それがトラウマになり、さらなる告発に踏み出せない。だがそれに気付かない議員たちは、明日は我が身と疑心暗鬼になるあまりまとまりを欠く。戦勝で国内に余裕が出来たことが、各人を保身に走らせていた。見かねたサン・ジュストが妥協点を見いだそうとするが、ロベスピエールはいい顔をしない。
 理想をもう一度語ろう、精神的な蜂起、道徳的な暴動を訴えようとするロベスピエールだが、議員たちにはそれはもう届かなかった。議題に上がったのはロベスピエール一行の逮捕、ロベスピエールはそれを民意として従おうとするが、周囲がそれを許さない。結局ロベスピエールは牢獄ではなく市庁舎に向かうことになる。行き着く先は言葉を失った上の再逮捕、彼は自分が憎まれていたことを思い知る。…
 

 冒頭の「最高存在の祭典」での「フランスは大きな家族にならなければならない」の考えは、元々ミラボーが提示していたことでしたよね。つくづく、この人が生きていたら。こんな血生臭い過程を経なくて済んだかもしれないのに。
 「清廉の士」ロベスピエールは理想を追求することを止められず、彼を盲信するサン・ジュストは、自分が妥協点を捜せばいいことは承知していながらも、そこに踏み出すことができない。まぁ本当に、あんなに熱く自分自身を捧げたのに、誰も幸せにならない結末。
 西洋史に関する知識が私には元々なかったので、「知らないことを教えて頂く」スタンスで読んでいたこの作品、フランス革命ってこんなにも振れ幅の大きい、犠牲者の多いものだったとは。
 でもこれ、まだ終わってない気がするんですが。ナポレオンもとうとう出て来なかったし、佐藤さん、また別の機会に書くつもりがあるのかしら。ちらっと出てきたデュマ将軍の名が(多分『黒い悪魔』ですよね)、何だか嬉しかったです。
 …いや、しかし。よくこの長編大作を、予定巻数でしっかり完結させたよなあ。佐藤さん、凄い。