読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

あきない世傳 金と銀 十三 大海篇 高田郁著 2022年 角川春樹事務所

 シリーズ最終巻。
 ネタばれあります、すみません;

 吉原の衣装競べで、芸で身を立てようとしている歌扇をモデルとして選んだ五鈴屋。煌びやかに着飾る花魁を相手に、菊栄の笄と黒の紋付で江戸っ子の心を掴み、一位と二票差の二位まで追い上げた。観客の反響に満足する幸、だが客席に音羽屋と惣次が並んでいるのを見かけ、胸がざわつく。
 歌扇も五鈴屋も菊栄の笄も評判になる中、幸は菊次郎の伝手で居ぬき物件の紹介を受けた。屋敷商いをメインにする新店舗を探していた折も折、広すぎる店を菊栄と二人で分けることで購入を決意。武家筋からの売り上げも伸び、吉次のメインカラーとなる新色も開発されて、何もかも順調に運んでいた矢先、新店舗の所有権に難癖がつく。先の持ち主 末広屋が、家屋敷を二重に売っていたというのだ。店の権利を主張したのは本両替商井筒屋、すなわち惣次だった。
 当事者だけでは問題解決の埒が明かず、惣次が示唆するまま奉行所に訴えることに。その間、営業する訳にはいかず、新店は閉めざるを得なかった。その上、江戸の町を火事が襲う。炎の中、幸を救ったのは賢輔だった。
 幸い五鈴屋は残ったが、町は打撃を受けた。幸は怪我を押して、町全体が活気づくようにと知恵を絞る。菊栄も、焼け跡への新たな店の普請を計画する。そんな中、音羽屋忠兵衛がお上に掴まったとの知らせが入った。謀書謀判、証文偽造の罪に問われたらしい。陰に見え隠れする井筒屋の姿に、幸は賢輔を連れて真相を確かめに走る。… 

 江戸の昔から「推し色」というのはあったんだな、今の日本にも脈々と受け継がれてるぜ(笑)。
 大団円ですね。悪者(?)は懲らしめられ、真っ当な努力は報われる。幸さんは賢輔の想いにうっすら気付いたようですが、どうもこのまま主従の関係は崩さない様子、そうだろうなぁ。
 結さんとの仲も元には戻りませんでした。結さんにも意地がありますしね。後々出るスピンオフ作品に、その後のことが書かれるんでしょうか。新たに取引が始まりそうな孫六織(これって別珍とは違うのかしら??)についても。
 作者の謝辞によると幸さんのモデルは、松坂屋の前身の女性店主なのだとか。成程、それで付録の出世双六の「あがり」が百貨店なのね~。でもこれ、作品だけ読んでたら「何故??」になるだろうなぁ(苦笑;)。表紙が木版画だということも、言及されるまで気付きませんでした。この頃の木版画は精密なんだなぁ。
 それにしても、五鈴屋も菊栄も、新店舗を取られてもびくともしない位の余裕があったんですね。金持ち喧嘩せず、先立つものは大切だわ。