読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

イオカステの揺籃(ゆりかご) 遠田潤子著 中央公論新社 2022年

 ネタばれあります、すみません;

 バラが咲き乱れる家で、新進気鋭の建築家・青川英樹は育った。「バラ夫人」と呼ばれる美しい母 恭子。ダムと蕎麦が好きな仕事人間の父 誠一。母に反発して自由に生きる妹 玲子。英樹の実家はごく普通の家族のはずだった。だが、妻 美沙が妊娠して生まれてくる子が「男の子」だとわかった途端、母が壊れはじめた。
 引っ切り無しに送られてくるLINE、高価なベビー用品の一覧に健康食品のリスト。美沙は恭子の過干渉に不安を募らせるが、英樹にそれほどの危機感はない。英樹の、育ちの良さから来る鈍さに苛立つ美沙、だが切迫流産の可能性を示唆されて、美沙は恭子に頼るしかない。美沙が鍵をかけられた部屋に軟禁までされて、英樹はようやく母の異常性に気付く。赤ん坊用に用意されたベビーベッドを、二重三重に囲むベビーサークルの異様さも。
 父親は当てにならない。とりあえず美沙を、妹 玲子の部屋に避難させた。だが、恭子は英樹の勤務先に押しかけて、玲子の住所を見つけてしまう。押しかけて来た恭子に相対するうち、玲子の恋人 羽田完は交通事故にあってしまった。
 一方、英樹はベビーサークルを見て以来、幼い頃の記憶を思い出し始めていた。厳重に閉じ込められていた弟の思い出、庭を飛び出して交通事故にあうさま。何故か観覧車で、母とオレンジジュースで乾杯したこと。赤ん坊への固執を、弟の死を防げなかったトラウマと判断する英樹だったが、そこには恭子の、実の母親から受けた、呪いにも似た受難があった。そしてそれらが引き起こした、恭子の罪も。
 恭子がいる限り、幸せにはなれない。美沙は英樹との離婚を決意する。だが、英樹は美沙に付くことを宣言、恭子と対決する。誠一が今まで家庭を顧みなかったことを詫び、恭子ともう一度やり直そうと提案する。ようやくすべてが納まるかに思えたが…。 (帯文に付け足しました)

 酷ぇ、毒親オンパレード。炎天下子供を車に置き去りにする親、歪んだ価値観を元に虐待する母親、暴力をふるう父親、英樹の父親だって育児放棄してるも同然。美沙の母親が再婚相手にすっかり入れあげてる様子もむっとしましたが、これは、後半の彼女の言い分に、「それも一理あるなぁ」とちょっと説得されました。
 これ、恭子の母親が、その母親からどんな扱い受けてたのかも気になるなぁ。こんな歪んだ価値観植え付けた家庭環境ってのが。
 で、何より腹立ったのが青川家の男二人で(苦笑;)。誠一の口癖「アップデートや」にムカつくムカつく(苦笑;)。恭子の母親が変わっててキツい人だった、ってわかってたならその人だけに世話を頼むなよ、気が付かないふりしやがって。英樹もものごとの都合のいい面しか見ない。あえて、ではなく気付かないのが何ともねぇ;
 結局割を食うのは女かよ、とちょっと遠い目をしてしまいましたね。
 美沙も「子供を可愛いと思えない」業を背負ってしまったようです。別の連鎖が続くような…; 
 そうそう、題名の由来がよく分からなかったなぁ。一瞬イオカステって恭子の母親のこと言ってるのか、誠一のことを羨ましく思ってたろと恭子に指摘されてたし、とも思ったんですが、「揺籃」とつくからにはイオカステは恭子のことだろうし。
 面白かったんですが、どうにもやりきれない気分にもなりました。