読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

フリーター、家を買う。 有川浩著 幻冬舎 2009年

 武誠治はフリーターである。そこそこの私大を卒業して何とか潜り込んだ会社に馴染めず、結局三カ月で辞めてしまった。再就職のクチはなかなか見つからず、バイトで糊口を凌ぐうち、だらだら一年半が過ぎてしまう。父親の誠一とは顔を合わせれば怒鳴りあい、折り合いは悪くなるばかり。やがて、名古屋に嫁いだ姉・亜矢子が帰って来て誠一・誠治父子を叱りつける。母親・寿美子が重度の鬱病に罹っていた。
 こんな状態になるまで何故放っておいたのか、何故気付かなかったのか。20年来続くご近所からの苛めに加え、家庭内の不穏な空気が寿美子の症状を進めてしまっていた。寿美子の根治には、この町からの脱出しかない。そもそもの病気の原因を作った頭の固い父親は病気自体に理解がない、当然引っ越しなど頭ごなしに否定する。母親の願いを成就させるためにはまず先立つものが必要だ。誠治の、本腰を入れた就職活動が始まった。
 寿美子の服薬の面倒を見ながらの、夜間の道路工事のバイト、昼間の就職活動。お金は貯まって来たがなかなか就職先は見つからない。一進一退する寿美子の症状、父親の無理解。今までの自分の態度を反省すると同時に、反発するだけだった父親に対して、長所も短所も含めた見方ができるようになる。寿美子の発作で一つの面接をふいにしたと思った矢先、バイト先からそれまでの勤務態度を認められ、社員への勧誘を受ける。安易な道に逃げているのではないかとの誠一の思い込みに苛立ち、悩み、誠治はようやく正社員へのクラスチェンジを果たした。
 大悦土木株式会社での立場は言ってしまえば何でも係、ただやり甲斐は山ほどあった。これからの成長、親会社からの独立を見越して部下の採用まで任される。第二新卒、フリーターのみの応募条件に応えて来たのが、豊川哲平と千葉真奈美だった。…

 他【after hours】傍観する元フリーター、豊川から見た誠治と真奈美を描いた番外編収録。

 読み易かった~。
 テンポよくぐんぐん進んでいくストーリー。主人公がとんとん成長していくのはやっぱり気持ちがいい。就職してからの展開は、ちょっと何か都合よすぎないかい、たった三ヶ月社会人経験があるだけの人間にここまでできるか??とかは思いましたけど。
 就職にしろ転職にしろ始めの一年が山場だよな~、と過去の経験をしみじみ思い出しつつ(苦笑;)。
 お父さんが嫌な人でしたね~。こう言う人とは、おだてたり宥めたりして付き合った方がラクだと解ってはいても、でも「何でこっちがオトナになってやらなあかんねん!」とか思っちゃうんだよなぁ。修行が足りないですね、誠治も亜矢子も大人だなぁ。お母さんへの対応なんか、お父さんほどじゃなくてもやっぱりいらいらするものだろうに。呆けとか鬱とか、身近にいる人ほど気付かないと言うか気付きたくないものですもんね。
 ラストの短編で豊川にやられてしまいました。しまった、「好きな人のいる相手に恋する」ってパターンは私のストライクだったよ、そのせいで『ベルセルク』のジュドーにも『こどものおもちゃ』の直純くんにもときめいたくらいなのに;  「俺にしとけば今叶うのに」の一言に涙ぐんでしまいましたよ、畜生(←意味不明・笑)。最後、真奈美の「あわよくば―」の台詞には、そんなことを言うタイプに見えなかったのでちょっとびっくりしました。嫁姑関係は大丈夫かな、小姑も手強そうだし(笑)、頑張れよ~。