読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

迷子の龍は夜明けを待ちわびる 岸本惟著 新潮社 2021年

 日本ファンタジーノベル大賞2020優秀賞受賞作。
 ネタばれになってる気がします、すみません;

 余命わずかな老人のために、天空語で書かれた日記を読んでやってほしい。唯一の身内の祖母を看取ったばかりで、糸が切れてしまったような状態になっていた天空族の娘セイジは、その依頼を受けることに。訪れた山の屋敷で、セイジは小さな男の子の亡霊と白龍に出会う。どちらも、そこの住人には見えていないらしい。
 読むよう渡された日記は40年以上前、老人の妻ローレルが書いたものだった。出会いから幸せな結婚、出産と育児。やがて、その息子ユッカは山の中で行方不明になってしまう。狂ったように息子を探し、ある日窓から飛び降りて死んでしまったローレル。彼女は、白龍が息子を攫った、食ってしまったと思っていたらしい。
 天空族は元々、生命力を植物に奪われる性質があり、「食われる」と表現する。同じように、龍はローレルを「餌」と呼ぶ。天空族は龍神を信仰していたが、今では大和族に雑ざってしまい、慣習も風習もしっかりと伝わっていない。一体何があったのか、白龍は語らない。
 老人を「旦那様」と呼んで世話し、心を寄せる老使用人夫妻や看護師、彼らはセイジにも偏見なく優しい。彼らの心残りを解き、彷徨う少年ユッカを救おうと、セイジは山の中に分け入る。ユッカの亡骸を探すために。…  (出版社紹介文に付け足しました)

 日本ファンタジーノベル大賞2021受賞作『鯉姫婚姻譚』のラストに既刊本として紹介されていて、「え、私これ読んでないわ、いつの間に出てたの!?」と慌てて借りた一冊。
 設定がなかなか呑み込めず、「あれ、思ってるのと違うようだな??」と何度か軌道修正しながら読みました。植物に食べられる とかあるからまるっきりの異世界と解釈してたら、現代日本とほぼ変わりない情景を想い浮かべたらよかったのね、天空族という少数民族がいるだけで。自動車走ってるしスマホも出てくるし、食べ物は基本和食だし。
 文化の行き違い、理解不足からくる誤解はままあること、それが同一民族の中でさえ起きてしまう哀しさ。それが衰退を表しているよう。ローレルと龍の間でも、セイジと前職場の天空族の間でも、基本的には優しさからくることだったのに。
 せめて龍がまだ生きていて語ってくれてよかった、ローレルには間に合わなかったけどセイジは理解しあえたし、これからそんな誤解が生まれないよう、知識を繋げて行くようだし。
 天空語で語られる箇所のフォントが違っていたのですが、これが少々読みにくい書体で何度か引っ掛かりました。この読みにくさも天空語を表していたのか、それとも想定外のことなら、文庫化とかすることがあれば御一考をお願いしたいかも(苦笑;)。