読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

下鴨アンティーク 神無月のマイ・フェア・レディ 白川紺子著 集英社オレンジ文庫 2016年

 シリーズ4冊目。

 星の花をあなたに
 桔梗柄の薄物の着物から、桔梗の花が零れ落ちていく。元の持ち主雨森絢子はもう亡くなっていたので、その遺族や介添人を鹿乃は訪ねた。絢子は脚が悪く、長く寝たきりだったらしい。雨森家に嫁ぐまで、実家の庭を眺めることを楽しみにしていた絢子。そんな彼女に、桔梗の花をそっと届ける人物がいた。皆、誰が届けているか察しながらも突き止めず、絢子も無理に探しはしなかった。絢子は本当に気付いていなかったのか、桔梗が消えるのはどういう意味なのか。

 稲妻と金平糖
 鹿乃の母 千鶴は喫茶店でバイトしていて、父 慶介と知り合ったらしい。おぼっちゃん育ちでおっとりした慶介に、千鶴は何かと苛立っていたのだとか。親しくなった切っ掛けは雷柄の帯、何故か雷鳴が響く。雷が縁で結ばれた夫婦が、子供を身ごもったのを知って誂えた品らしい。残されていたメモ書きを見ながら、鹿乃と慧は両親と同じように不思議を解いていく。

 神無月のマイ・フェア・レディ
 枯れ菊の絵柄の筈の着物なのに、豪奢な菊が様々に咲き乱れた着物、八掛には平家物語祇王の歌が書かれている。持ち主の名前を見て、慧の顔色が変わる。明楽喜和子、慧の父親の妻の名だった。着物自体は喜和子の祖父のもので、あまりの浮気性に耐えかねた元の妻が、あてつけに誂えた後、祖父と離縁したのだとか。祖父の元に残された着物を気に入っていた喜和子は、それを田村教授に渡したらしい。田村は喜和子と結婚したものの折が合わず、別の女性と暮らし、子を成し、結局その女性とも別れる結果になった。後悔を語る田村に、鹿乃は喜和子の気持ちを推測し、伝える。

 兎のおつかい
 芙二子の母 汐子の話。野々宮信篤は汐子との結婚をあっさり承諾した。丙午生まれというハンデを持った汐子は心配になって、真意を確認するためわざわざ京都まで信篤を訪ねたが、若い男が落としていった蒔絵の兎の櫛を拾ったことから、信篤と共に持ち主探しをすることに。骨董屋を辿って行きついた先は、成金の橘家。没落した大名華族の岩城家の妻を娶り、散逸した妻の実家の骨董品々を集め直しているらしい。妻はをれを当てつけに感じて素直になれず、夫もすれ違いを憂いていた。汐子は二人の釦のかけ違いを正していく。…

 登場人物の過去が明かされる一冊。鹿乃の曾祖父母のなれ初めまで(笑)。
 『マイ・フェア・レディ』の原作『ピグマリオン』では、ヒギンズ教授が振られるってのは知りませんでした。というか、原作があること自体知らなかった。でもその結末の方が個人的にはすっきりするなぁ。私の映画見た時の感想が「ヒギンズ、まず謝れ」でしたもの(苦笑;)。
 時代のせいでもあったんでしょうが、すれ違う恋が多くて、でもそれなりに幸せになっている話はほっとしますね。
 春野さんが不穏な雰囲気、何故だか私の中でのCV石田彰氏。京都弁だから、河西健吾さんかもなぁ。
 次巻に続きます。