シリーズ3冊目。
金魚が空を飛ぶ頃に
梅雨の時期、鹿乃は行きつけの喫茶店〈オー・ルヴォワール〉の店主 満寿から金魚柄の着物の具合を訊かれた。蔵にあったそれは、何十年も前、満寿の元の恋人が置いていったものだと言う。羽衣と名付けられ、赤い金魚が青く変わってしまう曰く付きの着物のルーツを辿ろうと、鹿乃は友達と連れだって金魚養殖が盛んな大和郡山を訪ねる。
祖母の恋文
骨董店北窓堂の主人から、祖母が若い頃書いた恋文を返された。祖父が祇園の芸妓から相談を受けたのに嫉妬した、そのことにまつわる手紙らしい。内容は十六模様の帯について、果たして蔵にあったそれからは低い唸り声が聞こえる。この現象のおさめ方は…。
山滴る
鹿乃は春野から一枚の写真を見せられた。春野の恩師 田村の知り合いの遺品で、四人の男女が写っている。うち一人が鹿乃の祖母のようだ。春秋柄の羽織を着た写真の持ち主の女性もいる。その羽織は蔵の所蔵品で、羽織紐がなく、出すと冬山の柄になってしまった。羽裏にあった和歌から、鹿野は三角関係を疑う。田村は、持ち主と出征した幼馴染み二人との昔話を語る。
真夜中のカンパニュラ
夏の間、良鷹は蹴上の洋館に引き籠る。その別邸の庭にはこの時期、風鈴草の柄の着物を着た女性の幽霊が出るのだ。彼女は元の洋館の持ち主の奥さんで、旦那に軟禁され、暴力を振るわれていたらしい。彼女は何の心残りがあって庭に佇んでいるのか、彼女に心を囚われているように見える良鷹を心配して、真帆は調査を始める。…
教養小説の側面も強くなってきた感のある三冊目、獅子身中の虫を牡丹の夜露で抑えるとか初めて知りました。
お祖母さんが一旦解決していた筈のものがどうしてまた不思議に戻ってしまうのか、定期的に世話を焼かないといけないものなんだろうか。
今回着物にまつわるものではない、実際の幽霊も扱われました。慧ちゃんのお父さんも出て来たことになるのかしら、春野さんも不穏な雰囲気です。
次巻に続きます。