シリーズ1冊目。
アリスと紫式部
京都、下鴨。旧華族の血を引く野々宮鹿乃は高校三年生。ぐうたらな骨董商の兄 良鷹と、下宿人の近世文学准教授 八島慧と三人で暮らしている。大好きだった祖母は去年亡くなったばかり、鹿乃の着ているアンティーク着物は大体祖母のお下がりだ。今日もトランプ柄の羽織を探して蔵の中へ、ついでに大量の着物を虫干したら、そのうちの一枚、源氏車が描かれた着物の、その絵の中の車が壊れてしまった。
兄曰く、蔵の着物は「憑いとる」着物なのだとか。柄を元に戻そうと、鹿乃は慧と奔走する。
柄の好み、サイズからみて祖母のものではない。昔の写真から祖母の幼馴染み 敏子の母親 三好子爵婦人のものだと判断した鹿乃は、早速敏子を訪ねる。敏子はその着物は後妻に取られてしまった、自分はその継母に苛められていたと言う。
牡丹と薔薇のソネット
蔵にしまわれていた長襦袢から泣き声が聞こえる。意匠は牡丹灯籠、衿には数字の書かれた手紙が何枚も入っていた。宛名から祖母の女学生時代の友人に当たりをつけて調べてみると、彼女と学生の叶わなかった恋が判明する。鹿野は学生の孫 石橋春野から、羽裏の端切れを貰って来た。
星月夜
蔵の中にたった一枚、祖母の着物があるらしい。それがどれか見つけるよう良鷹に謎掛けられて、鹿野は祖母の日記を読み始める。新婚当初の祖父母のやりとり、素直になれない祖母の内面、祖父の言動。祖父の遺品のスケッチもあわせて、鹿野は祖母の着物を当てて見せる。その着物からはある筈の白露模様が消えていた。…
自分のサイズに合うアンティーク着物かぁ、羨ましい!…と言う訳で、女性の欲望が詰まったような作品、美味しい食べ物や花や、見目のいい男性も出てくるしね(笑)。
内容としては教養小説ではないかしら、という一面も。洋の東西を問わず古典に通じたコーディネイトで問題を解決、って斬新で面白かったんですけど、なかなか高校生にハードル高くないかい? 勿論、それを支える骨董商のお兄さんと准教授の下宿人と、春野君がいるんですが。
それにしてもお祖父さん、スパダリというかたらしというか。指先にキスとかちょっとどきどきしましたよ(笑)。
続編も出てるんでしたよね。予約本の隙間に入れられるかな。