読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

江戸川乱歩文庫 パノラマ島奇談 他四編 江戸川乱歩著 春陽堂書店 2015年

 ネタばれあります、すみません;

 パノラマ島奇談
 売れない小説家 人見広介は、自分と瓜二つの同窓生 菰田源三郎の急死を知り、大富豪の彼との入れ替わりを画策する。自分は船から落ちて死んだように細工した上で、菰田の実家へ移動し、さぞ菰田が息を吹き返したように墓から泥だらけで這い上がってみせた。親戚との噛み合わない会話は記憶障害でやり過ごし、菰田になりきった人見は、菰田の莫大な資産を使って、自分の空想と幻想の世界――パノラマ島を実現する。だが菰田の妻 千代子は彼を怪しみ、それに気付いた人見は千代子を殺してしまう。
 以後、理想郷で終日を過ごす人見の元に、北見と名乗る男が訪れる。北見はかつて人見が書いた小説『RAの話』を読んでいて、その話とパノラマ島との類似を人見に指摘する。

 白昼夢
 白昼、堂々と街頭で演説する男がいる。自分の妻を殺したという内容で、死体を屍蝋化したと言う。果たして男の傍らには、ガラス張りの人体模型らしきものが…。

 鬼
 S村の線路脇で、若い女性の死体が発見された。山犬に喰い荒らされて酷い有様だったが、着物などから山北鶴子と判断された。彼女を殺したのではないかと疑われたのは大宅幸吉。鶴子の許婚者だが、彼は別の女性 絹川雪子と恋仲で、鶴子を疎ましく思っていたらしい。犯行当日、大宅はN市の恋人を訪ねていたが、彼女はそれを否定する。しかもその後すぐ、雪子は行方不明になってしまった。大宅の友人で探偵小説家の殿村は、雪子の態度に疑問を抱く。大宅家の縁の下から出て来た血まみれの浴衣は、五日前に現場で見つかっていた、胸にナイフの突き立った藁人形との関係は。

 火縄銃
 良く晴れた冬の日、友人 林一郎からの招待で、A山麓Sホテルへ赴いた「私」。だがそのホテルの一室で、一郎は銃で撃たれて死んでいた。現場には凶器の火縄銃、それは弟の二郎のものだった。二郎の犯行が疑われる中、「私」はこれは犯罪ではない、と言い切る。

 接吻
 新妻のお花が、とある写真を抱いて愛おしそうに接吻しているのを見てしまった。彼女がその写真をしまった箪笥を盗み見て、改めて確認してみると、彼女を紹介してくれた課長の写真である。さてはお花は課長のお手つきだったのか、と憤懣やる方ない山名だったが。…

 書架で見かけて、そういえばこの有名な作品を、私読んでないなと借りてみた一冊。と言うか、江戸川乱歩自体、私あまり読んでないんですが。
 『パノラマ島奇談』は、何となく耽美小説、怪奇小説のイメージを持ってたんですが、がっつりミステリで驚きました。入れ替わる算段、死体の隠し方とか「ほうほう、成程」で、その上で乱歩の趣味満載。「よくやるな~」が先には立ちましたが。
 『鬼』に関しては、あれ このトリック知ってるぞ、と思ってたら、解説で触れられてましたね。そりゃそうだな、この時代はこういうことに寛容だったんだよな~。
 『火縄銃』は習作だったそうで、うん、確かに今ならバカミスの範疇かも(苦笑;)。作者がこれだけの大御所になったからこその作品でした。
 でもとにかく、『パノラマ島奇談』はインパクトの強かった。この作品に影響を受けた人がたくさんいるのも理解できる内容でした。で、江戸川乱歩は確かに推理小説作家でしたよ。