読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

炉辺の風おと 梨木香歩著 毎日新聞出版 2020年

他の誰でもない、自分の生を生きていく。

大転換の時――八ケ岳での山小屋暮らし、鳥や植物、小動物との交流から〈新たな日常〉を探る地球視線エッセイ。

毎日新聞「日曜くらぶ」連載の単行本化。  (出版社紹介文より)

 前半に書かれたM教授邸の話に覚えがあって、あれ、この本読んだことがあったっけ?と一瞬戸惑った一冊。読み進むうち、あ、違う、読んでないな、と認識できました。以前に書かれたM教授については、その方の宗教的な解釈というか分析というか、そこにも触れられていた覚えがあったし。この本では、暮らしというか家の佇まいのみの言及でした。それにしても潰してしまうには勿体ない家のような気はしたんですが。
 薪ストーブ、さまざまな小鳥、植物にリス。梨木さんの品のいい文章、語り口に浸りつつ、え、リス尻尾取れるの、ヤマバト うちの近くでも ででぽっぽうって鳴いてるけど、クリスマスローズというと『はみだしっこ』思い出しちゃうなぁ、と呑気に構え、かというと沖縄の描写「内臓をごっそり取られたよう」という表現や日本政府の事なかれ主義も極まれりな態度、難民へのあまりに不親切さにぞっとしてたら、もっと切実に怖いことが。
 病床のお父様への医療対応。…訴えたら勝てるんではと思ってしまうほどの。でもこれ、泣き寝入りしちゃうよなぁ、これからもお世話にならなきゃだし、って思うよなぁ。お父様、こんな病院で死ねるか、って無意識ででも思ったのかも。せめて説明が欲しいという気持ちは切実に共感しました。責めるつもりはない、説明だけでも。
 梨木さんの文章は、読むとこちらも姿勢を正される思いがします。気軽に臨むと足下引っくり返されるんだよなぁ(苦笑;)。