読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

草木鳥鳥文様 梨木香歩 文/ユカワアツコ 絵/長島友里枝 写真 福音館書店 2021年

 「これは新しい形のバードウォッチングではないかと思った。アウトドアとは無関係の、ごく個人的な内界を覗き込む形の」(梨木香歩/本書「あとがき」より)。
 作家・梨木香歩による四季の野鳥と植物をめぐるエッセイ集。梨木が綴った鳥と草木の姿を画家・ユカワアツコが古い抽斗の中に描く。その抽斗を写真家・長島有里枝が街に連れ出し、撮影した。言葉、絵、写真が織りなす三重奏。暮らしに身近な自然が輝き出す。
 福音館書店の雑誌「母の友」で2017年4月号から2020年3月号にわたり連載された大人気企画がついに単行本化。身近な自然を楽しむヒントとなれば。また、時折本を開き、美しい言葉、絵、写真を眺めることが、忙しい毎日の中の"深呼吸の機会"となれば。
 オールカラー、函入り、クロス装。   (出版社紹介文より)

 ユカワさんは木の板に絵を描く人なんだな、と思ってたら、梨木さんのあとがきに曰く、カンバスは古い箪笥の引き出しの内側なんだそうで。慌ててよくよく見直してみたら、確かに額縁に見えた所に取っ手がついてる。…そうか、箪笥を引き出したら、そこに鳥がいるのか。何と雅な、と思うと同時に、しまったものに絵の具が着くとか大丈夫かしら、と思ってしまった自分の無粋さが情けない。その辺りは考えてあるでしょうよ(苦笑;)。
 梨木さんの文章が堪能できる一冊。ヤマフジの花を「羽衣のうつくしい衣装が引っ掛かっているよう」と表する。または「典雅な緞帳のよう」とも。サンコウチョウの尾は「まるで先っぽが優美に曲がった柄杓の取っ手」。品のいい、どっしりした文章。カブトムシのツノが落ちてた話や木屑が落ちてた話なんかは、別のエッセイでも題材にしてらっしゃいましたね。
 妙な知識が増えるのも嬉しい。ハトムギってジュズダマの栽培種だったのかとか、クレソンが「上野精養軒の厨房で、当時廃棄された茎の一部が、不忍の池に紛れ込んで野生化」したものだとか。マテバシイの実はぜひ食べてみたい、と思いましたよ。
 鹿児島が亜熱帯化してサクラ開花の南限ギリギリになっている、スズメが激減している、との心配な情報も。うちの近くはスズメはまだまだいる感じですけど、庭のビワはよくつついてるし(連中、その間は一切囀らねえ!)、通勤途中にもよく見かけるし。
 絵が置かれているのは何だか懐かしい古い家屋。一昔前には、こういう和洋折衷のお家よくありましたよね。これもまた、失くなりつつある風景。