読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

エストニア紀行――森の苔・庭の木漏れ日・海の葦 梨木香歩著 新潮社 2012年

 祖国への変わらぬ熱情を静かに燃やし続けてきた人々の魂に触れた紀行。エストニアの人々が歌う「我が祖国」とは、生れた土地のこと。そして、それは地球そのもの
 スカンジナビア半島の対岸、バルト海に面したエストニア。首都タリンから、古都タルトゥ、オテパーの森、バルト海に囲まれた島々へ。旧市街の地下通路の歴史に耳を傾け、三十万人が集い「我が祖国は我が愛」を歌った「歌の原」に佇む。電柱につくられたコウノトリの巣に親しみ、その姿を待ち望む。キヒヌ島八十一歳の歌姫の明るさに感服する。森の気配に満たされ、海岸にどこまでも続く葦原の運河でカヌーに乗る。人と自然の深奥へと向かう。
 ――端正な街並みと緑深い森、他国による長い被支配の歴史を持つこの国への九日間の旅の記録。
                           (出版社の内容紹介文から引用しました)

 やっぱり、梨木さんの文章は好きだなぁ。静かに落ち着いた、品のいい言葉づかい。でもどことなくユーモラス。養蜂の歴史の中、巣箱を熊に襲われないための対策なんて、「本当かしら」と疑いたくなるほど微笑ましい。「――おお、完璧ですね……」の合の手に思わず笑ってしまいました。追い払う、だけでいいのね(笑)。
 美味しいベリーを地元の子供にご教授頂き、泊まったホテルの幽霊(?)に愛着を抱き、茸採りに目を輝かせ(写真も載っているのですが、もう童話に出て来る茸のように可愛らしい!)、塩辛くない海水に驚き、自作のゼリーに思いを馳せる。
 イスラム圏での女性の旅の心得なんて知りませんでした。既婚であるということがそんなに重要だとは。
 ただ、プラスのことばかりが書いてある訳ではありませんでしたね。プリンスエドワード島が、橋が出来て以降犯罪率が上がったとか知りませんでした。私が旅行したのは「橋ができること」が決まったばかりくらいの頃で、まるで危険を感じない環境が本当に楽しかったのに。本書の最初の方で出てきたゴグマゴグという言葉は、私は赤毛のアンのシリーズの中で知りました。
 チェルノブイリが、野生動物の聖地になっているということも初めて知りました。「ヒトはここまで嫌われている」の一節が重い。
 そうそう、梨木さんに付き添った編集さんの名前が盆小原さん。…高校の同級生にそんな名字の人がいたなぁ。よくある名前ではないのでちょっと「お」と思いましたよ。いや、ただそれだけ(笑)。