読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

マイクロスパイ・アンサンブル 伊坂幸太郎著 幻冬舎 2022年

 ネタばれになってる気がします、すみません;

 一年目
 父親の暴力や仲間のいじめから逃げだした「ぼく」は、仕事を終えたばかりのエージェント・ハルトと出会い、飛行機への同乗を許される。所がそれはエンジンを積んでないグライダーで発車できなかった。
 その頃、彼女に振られた松嶋は、猪苗代湖畔でおもちゃのグライダーを拾う。松嶋は湖に向かってそっとそれを投げた。

 二年目
 同じ場所を、今度は任務で訪れた「ぼく」。敵に見つかり、絶体絶命。
 一方、松嶋は自分の失言を悔いていた。その罪滅ぼしも兼ねて、彼女の失せ物を一緒に探すことに。暗くなり始めた猪苗代湖で、二人はカゲロウの大量発生を見る。

 三年目
 門倉課長はいつもぺこぺこ謝っている人だ。松嶋は一緒に出張に出かけながら、頼りない彼の話を聞いていた。
 同じ頃、「ぼく」は同じ場所でいじめっ子と遭遇していた。敵施設の追手から逃げていたと言うのに。

 四年目
 エージェント・ハルトが捕まってしまった。「ぼく」は単身、敵施設へ向かう。何とか救出はできたものの、敵に囲まれて四面楚歌。所がいきなり、周囲が壁のようなものに包まれた。
 松嶋は密かに惹かれている先輩 天野と、また猪苗代湖に来ていた。彼女はかつて猪苗代湖に、お守りをふざけて捨てられた嫌な思い出があるという。

 五年目
 エージェント・ハルトと「ぼく」は、辿り着いた見知らぬ土地でのんびりと暮らしていた。その集落には、巨人の国から扉を通って来たという男もいる。
 松嶋と天野は猪苗代湖の駐車場で、接触事故で揉めている二組と関わることに。お互いの名前にびっくりしていると、一瞬扉が現れ、そこから男が二人出て来た。

 六年目
 扉を通ってこちらの世界に来た「ぼく」とエージェント・ハルトは、何だかんだでゲーム実況配信で人気者に。そのコメントで、どうやら扉の出現方法の察しがつきはじめた。
 結婚が決まった松嶋は、彼女とまた猪苗代湖へ。突然来た暴風雨の中、別世界から来たという二人の男と出会う。元の世界に帰りたい二人は、何かを「揃え」たがっていた。

 七年目
 イベント開催の為、猪苗代湖に集まった松嶋や天野たち。
 同じ頃、「ぼく」たちも平和式典のため猪苗代湖に集まっていた。ゲームで培った腕前で、「ぼく」とエージェント・ハルトは敵組織から勝利をもぎ取ったのだ。お祝いとして兵器を転用したカマドウマを打ち上げたのと、松嶋たちの上空に、コントロールを失ったドローンが落ちてきたのはほぼ同時だった。…

 猪苗代湖の音楽フェス「オハラ☆ブレイク」用に書かれた連作短編がまとまったもの、とのこと。所々に参加アーティストの歌詞も挟まれて、伊坂さんこういうの、本当に器用にこなすよなぁ。
 最初、「ぼく」の世界が掴めず、頭の中にクエスチョンマーク飛ばしながら読んでましたが、はたと「あ、そうか、『マイクロスパイ』ってこのことか!」とタイトルとの整合性に気付き、そこからはすらすら読めました。あとがきにあるように、御伽噺めいたもの、なのね~。
 面白かったです。ミクロな世界と巨人の世界が、ちょっとずつ関連していく。勿論お互い意識なんかしていない。伏線の回収も相変わらず見事、落とし物する人多いなぁとは思ったけど(笑)。最後の最後でもっとミクロな世界が出てくるとは!
 「心のタンクに詰まっていた大事なものが、どんどん目減りしていく」感情を味わっていた青年が、だんだん成長していくのを見守るのは嬉しかったです。これ、フェス参加者の人、楽しみだったろうなぁ。用事があったりして行けない年があったら、その次の年 戸惑ったろうなぁ(笑)。「何があったの、この間に!?」ってなった人いたんじゃないかしら。私は一気に読めてよかった(笑)。