読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

星の民のクリスマス 小谷田奈月著 新潮社 2013年

 第25回日本ファンタジーノベル大賞 大賞受賞作。
 ネタばれというか、粗筋結構書いてます、すみません;

 物語の中でだけ、生きていたい
 最愛の娘が家出した。どこへ?
 クリスマスに父が贈った童話の中へ。
 父は小さな娘を探すため小説世界へともぐりこむ……。
 残酷でキュート、愛に満ちた冒険譚              (帯文より)


 母親のいない我が娘に、歴史小説家の父親は童話を書いた。サンタクロースと金色・銀色の角を持ったトナカイ、キツツキの子の短いお話。
 この童話をこよなく愛した彼女は、十歳のある日、とうとう物語の中に入ってしまう。ただ、そこは父の書いた物語とはかなり様相を呈していた。発光する雪の世界、金銀のトナカイやキツツキの子は人間で、一年に一回スノーモービルで外の世界を行き来する高等配達員。キツツキの子と銀色配達員は思いの行き違いから仲違いをしていた。
 娘を庇い、自分の子としてこの世界に住まわせようとする銀色配達員。娘を追って来た父の姿は、この世界では影としてしか映らない。なのに世界の創造主として、昼を闇にしたり、一年を通じての曇り空を晴らせる力を持つ。何故か父の姿に気付いたキツツキの子は、この世界の歴史、成り立ちを突き詰めようとする。ひいては、この閉塞的な世界の価値観をひっくり返そうと。
 キツツキの子の思いは暴走し、娘は「入って来てはいけない外の存在」として拘束される。哀しみにくれる銀色配達員を見て、キツツキの子は世論の操作と彼女の救出を計画する。…

 著者紹介の欄に、好きな作家として上げられていたのがミヒャエル・エンデ。…なるほど。ここではないどこか、「物語の中に入る」というモチーフを、内側から描く。
 影になってしまったお父さんが、その後どうなったのか気になりました。外の世界に戻って、この世界の歴史小説を書いてたりしたら嬉しいんだけど。

 日本ファンタジーノベル大賞は今回を持って終了だとか。平成元年の第一回から贔屓にしていた賞なのでとにかく残念です。恩田陸畠中恵越谷オサム他多数の人気作家を輩出しているのに、小野不由美の大人向け小説への扉を開いたのもこの賞なのに。
 確かにこの頃はライトノベル化しているかな、と思う作品もありましたが、それでも「新潮社から出す」という意義は大きいと思うのに。先行投資として、決して損はないと思うから、続けてくれないかなぁ。