読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

未知の鳥類がやってくるまで 西崎憲著 筑摩書房 2020年

短編集。

 行列(プロセッション)
瑠璃のような、翠玉のような蒼い空を、行列が行く。

 おまえ知ってるか、東京の紀伊国屋を大きい順に結ぶと北斗七星になるって
東京湾地震の後、友達のヒムカが言った。「知ってるか、東京の紀伊国屋を大きい順に結ぶと北斗七星になるって」――僕らは北斗七星の先の北極星を探す。図書館に辿り着いた、さらにその先を。

 箱
小学三年の時、転校してきた彼はほぼ立方体の箱を持ち歩いていた。小型犬の棺のような大きさのそれを。大人になって再会して、まだ彼はそれを持ち歩いているらしい。

 未知の鳥類がやってくるまで
校正係の暁島みか子は、著者の朱筆が入った校正刷りを紛失してしまった。送別会の会場で預かった原稿、どこで失くしてしまったのか。台風の迫る土日、記憶を頼りにあちこちを歩き回る。

 東京の鈴木
警視庁の公式サイトに届いた謎のメール。「トウキョウノスズキ」から来たメッセージは、テロの予告なのか。大量の泥が降ったり、大量の蛾に襲われたり、赤つつがむしが大量発生したことは。

 ことわざ戦争
二つの小さな国は、詩の戦を始めた。勝敗は後世が決める。銀髪の詩人と赤ら顔の小柄な婦人が相対する。

 廃園の昼餐
気が付いたら俺は全知だった。母親の腹の中にいる現在でさえ。

 スターマン
島田はスターマンと呼ばれていた。自分は地球人じゃないんだ、と言い出してから。

 開閉式
わたしには扉が見える。母親の手の甲に、担任の先生の後頭部に、動物に。そして一緒に住んでいるまさるさんにも。

 一生に二度
みすずはよく転ぶ、そして空想癖がある。大学の時知り合った、同じように空想癖があって、物語の続きを語る男や、人類学者の男が調べるトゥールレイクの日本人収容所で起きた日本民族の復帰、フィンランドのポドム湖で起きた殺人事件。年老いてから夫に聞いた、人を誘う海中の岩の話。… 

 …う~ん、分からん。幻想小説の類なのかなぁ。
 詩で決着をつける、判断は後世に任せる、ってのは素直に美しくていい寓話だ、と思いました。