読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

あきない世傳 金と銀 十一 風待ち篇 高田郁著 2021年 角川春樹事務所

 シリーズ11冊目。

 宝暦十年(1760年)、江戸は大火に見舞われた。五鈴屋は被害を免れたが、菊栄の意匠を凝らした簪は焼失し、結の営む日本橋音羽屋も焼け落ちた。結の無事を聞いて胸をなでおろす幸に対し、結は変わらず敵意を募らせる。
 火災によって、全ての物の価格が高騰した。綿花の不作も後押しして、木綿も元値から値上がりした。五鈴屋は防災の祈りを込めて拍子木柄の図案を決め、しかも両面糊置きの技術を共有して浅草の太物商全体で売り出す算段を提案する。そのため、その技術の流出も招いたが、幸は気にしなかった。
 度重なる火事を乗り越えての芝居開幕、千穐楽でお披露目された菊栄の簪販売も軌道に乗り始めたある日、年一回訪れる常連客からの大口注文が依頼された。勧進相撲の力士用の浴衣の誂え。幸は賢輔と共に親和文字の図柄を考案し、やはり浅草太物仲間での販売を決める。相撲興行の日、浴衣を着て浅草を練り歩く人気力士だち。女性中心だった顧客が、男性へも広がった瞬間だった。…

 いよいよ快進撃。丁寧に誠実に、決して独りよがりにならずに行動してきたことが、実を結び始めます。いや、縮緬十反売った旅人とか、実は覚えてなかったんですけどね、己の記憶力のなさが恨めしい;; 
 原材料の安定供給を見込んでの栽培地の援助とか、絹でやっていたことを木綿でも、しかも仲間でやり始める。お富久さんの心意気がちゃんと残っているのも何だか嬉しい。
 再び呉服屋への道も見え始めました。まだ時間はかかりそうですけど。
 次巻に続きます。

よつばと! 14巻 あずまきよひこ著 アスキーメディアワークス

 丸いテーブルを設えて、ビーズ細工に熱中する。
 お隣さんと一緒にヨガを体験し、お姫様に憧れる。地面に届くような長い髪にビニールのゴミ袋で作った裾をひきずるドレス。
 東京に出かけておとうさんの妹こはるこから車を貰ってくる。ついでの筈の原宿観光でわたあめとクレープを楽しみ、ホテルレストランでの初バイキングを堪能する。
 帰りはオープンカーで高速道路を体験。…

 よつばちゃん、体柔らかい、羨ましい!!
 長いスカート嬉しいんだよな、ちょっと持って歩くのむずむず楽しいんだよな。
 電車の切符を自動改札に入れる時のどきどきと失敗した時の絶望感。言われてみれば確かに覚えてるんだよなぁ。
 袖すりあうも他生の縁、よつばと触れ合う人みんなノリがよくて優しくて、読んでるこちらまで優しくなってくる。
 さて、車は今後どう活躍してくれるのか。次巻に続きます。

邪教の子 澤村伊智著 文藝春秋 2021年

 ネタばれになってる気がします、すみません;

 光明が丘ニュータウンに住む祖父母の家に同居するため、引っ越して来た茜ちゃん。彼女の母親はとある新興宗教にハマって娘を監禁、暴力をふるっていた。家族も手を出せない状況の中、同級生の慧斗は祐仁と朋美と共に、彼女を救い出す決心をする。無謀だったその計画は、「大地の力」を身に着けた教祖の協力で成功した。以来、光明が丘ニュータウンは「大地の力」を原動力とする新興宗教の宗教都市ならぬ宗教ニュータウンとして、地元の人々と共生している。
 テレビ局社員の矢口弘也は「アウトサイド食リポ」と称して、アウトサイダーの食事風景を取材していた。ある日彼の下に、久木田祐仁と名乗る男から連絡が来る。彼は新興宗教「大地の民」から抜け出して来たという。元々「大地の民」の欺瞞を暴きたいと思っていた矢口は、彼を伝手として光明が丘ニュータウンに乗り込んだ。矢口の取材に如才なく応じる女性 飯田茜は、かつて権藤慧斗が助けた少女だった。今や教祖夫人の慧斗を心から尊敬し、明るく振舞う茜。その異様に若い外見を矢口は怪しむ。やがて、祐仁がベランダから落ちて死亡するが、事故で片付けられてしまった。別の宗徒からは、慧斗がテロを起こそうとしている、との証言も入る。「大地の力」とは存在するのか、矢口は大量殺人を止められるのか。…

 手記から始まる第一章、これが裏のある文章だということは何となく察せられる訳で、ですからこれの種明かしは、うんうん、そうだよね、ここ引っ掛かってたのよ、って感じで読めました。
 第二章になって、矢口の「大地の民」への敵意が普通ではなく、その理由がいつ明かされるのかなぁと思いつつ。何だかあっさり、こんなもの?と思ってたら、もうひと捻りありましたね。
 手記で相手側がばたばた倒れる展開に、これ、毒盛られたんじゃないの?とは思ったんですが、そうか、そう来たか~。多少無理があるんじゃない、と思う箇所はありましたが、謎は説明ついてましたし、面白かったです。

一ノ瀬ユウナが浮いている 乙一著 集英社 2021年

 ネタばれになってるかも、すみません;

幼馴染みの一ノ瀬ユウナが、宙に浮いている。
十七歳の時、水難事故で死んだはずのユウナは、当時の姿のまま、俺の目の前にいる。
不思議なことだが、ユウナのお気に入りの線香花火を灯すと、俺にしか見えない彼女が姿を現すのだ。
ユウナに会うため、伝えていない気持ちを抱えながら俺は何度も線香花火に火をつける。
しかし、彼女を呼び出すことができる線香花火は、だんだんと減っていく――。

乙一が映画『サマーゴースト』の姉妹作として『花火と幽霊』をモチーフに執筆したオリジナル青春小説。  (出版社HPより)

 何の予備知識もなく、「乙さん新刊出たんだ~」と予約を入れた一冊。
 驚いた。ド直球の恋愛小説。見事に泣いてしまいました。
 乙さん、上手いなぁ、切ないなぁ。ユウナの設定がいい。漫画オタクで、本気で水見式やっちゃうような女の子。心残りは少年ジャンプの続き、いずれ東京に出て漫画に携わる仕事に就きたかった、できれば漫画家になりたかった。投稿作も描いていた。電子ではなく紙に、なのが何とも泣ける。主人公の男の子もいい。特にやりたいことや目標がなく(そんな子結構いると思う)、ただユウナと一緒にいたかった。線香花火が無くなってしまった経緯には「やられた!」と思いましたし、タイムカプセルのくだりは、読んでるこちらまでページを繰る手が早くなりましたよ。彼を気遣い、支える友達も個性的で、優しくて。
 言っちゃなんだけれど、似たようなモチーフの作品は沢山あると思うんですよ。でも、切り口次第でここまで見せられる。
 同じような設定で各作家が競作したら面白そうだなぁ、と無責任に思ってしまいました。個性も、力の差も出そうだなぁ。

爆笑問題 with タイタンシネマライブ#75に行ってきました。

 2月11日(金)、「タイタンライブ」の生中継を見てきました。
 銀座時事通信ホールで開催されるお笑いライブ「タイタンライブ」を各地TOHOシネマに生中継、スクリーンで鑑賞するシネマライブ。
 今回は午後5時30分からのはじまり、休日だからかな、早かったですね。
 私はTOHOシネマなんば本館にての鑑賞です。

 出演はまんじゅう大帝国、ダニエルズ、春とヒコーキ、トム・ブラウン、キュウ、シティホテル3号室、ウェストランド、脳みそ夫タイムマシーン3号日本エレキテル連合スピードワゴン、プリンプリンと爆笑問題でした。 

 まんじゅう大帝国は「美味しいおにぎり」の説明に窮し(シュールだよなぁ;)、ダニエルズは女性上司の説教がいつの間にやらピンネタまで昇華されるコント。
  春とヒコーキはeスポーツに興じるそれぞれ、トム・ブラウンはあまりに強いツッコミに「ネタが飛びました」と言いながらも、バラエティ女王を作ろうと20さいもりみゆきを合成(よくわからんなぁ・笑)、キュウは猿蟹合戦に出てくる登場人物を思い出しあい、シティホテル3号室はシリコンバレー珍道中のコントを。
 ウェストランドはあるなしクイズを偏見しまくり、脳みそ夫はむちむちにわとりを踊り、タイムマシーン3号は「アニメを作る」漫才。…色々よく思い付くなぁ、でも確かにみんな「太ってる」(笑)。
 日本エレキテル連合は雑誌の取材のあれこれのコント。ああいうの本当にあるのかもなぁ、何だかなぁ。
 スピードワゴンは「伝説のアウトロー」の漫才。好きなネタだったので、わくわくしてしまいました。初めは一線引いてた井戸田さんがどんどんのめり込んでいくのが可笑しくて、井戸田さん本当素敵(笑)。今は名古屋ドームと呼ばないのね~。
 プリンプリンは「野球ネタが被りました」と言いながら高校野球のコント、浅草演芸場で培ったネタを。で、最後は爆笑問題です。オリンピックは勿論、オミクロン株、ワクチンや入試のカンニング騒動 etc.etc, 当日午前中のスノーボード金メダルの話題まで入ってました。…早い!(笑)

 エンディングはゲストの三組とトーク。トム・ブラウンのみちおさんはコロナワクチン受けて「ぽかぽかしました」「体の中に太陽が入ったよう」だったそうで、早くもう一回受けたいんだとか。…何だか危ない(笑)。
 タイムマシーン3号の関さんにはお子さんが産まれたそうで、おめでとうございますw 芸能界というかお笑い界、おめでた続きですね。若林さんも山里さんもww
 スピードワゴンは19年振りにライブに出られたとか、井戸田さんと太田さんがまぁ息の合ったやりとりで(笑)。小沢さんが爆笑問題の漫才を褒める褒める、「田中さん凄い」「うまい」「導入やら話題の代え方やら」って言って下さってるのに、太田さん「いや、俺が全部指示してるんだから」。相変わらずですねぇ(笑)。

 さて、次回は4月。世間はどうなってるんでしょうねぇ。少しは治まってたらいいんだけど。

誰がネロとパトラッシュを殺すのか 日本人が知らないフランダースの犬 アン・ヴァン・ディーンデレン ディディエ・ヴォルカールト編著 塩崎香織 訳 岩波書店 2015年

 イギリス人作家が、なぜフランダース地方を舞台に悲しい物語を書いたのか。本国ベルギーでは、なぜ人々に受け入れられなかったのか。アメリカで作られた5本の映画は、なぜハッピーエンドにに書き換えられたのか。日本にはどのように紹介され、1975年のテレビシリーズはなぜ大成功したのか。そして、悲しいストーリーの『フランダースの犬』が今も日本で愛され続けている理由とは。 (折り返し紹介文より)

 恩田陸さんのエッセイで名前を見かけて、手に取った一冊。
 紹介文にあるように「なぜ」が解明されるというより、「こういう事情で」の説明がされてる感じ。…あれ、解明されてるってことか(苦笑;)。
 ウィーダ(今で言うハーレクイーンロマンス作家みたいな感じだったのかしら? 若くして大金持ちになってから醜聞での転落、犬を友とした晩年、となかなかに波乱の人生;)の原作は、一応読んだことがありました。中学生の頃だったんじゃないかな、内容というよりその短さに驚いた覚えがあります。イギリス人だったとは知りませんでした。多分そのせいもあって、フランダースと言いながらフランダースの描写ではなく、だからフランダースの人も愛着が持てず、スルー状態。それがアメリカ映画でも日本のアニメでも。「日本の作品と言いながら中国を舞台にしている感じ」ってのは物凄く分かり易い例えだな、と思いました。ベルギーが観光産業として今イチ乗り気にならないのもむべなるかな、比較例の『赤毛のアン』はプリンスエドワード島に住んでるモンゴメリーが「世界で一番美しい場所」として、愛着持って作品の舞台にしてたもんなぁ。「聖地巡礼」って概念も、外国の人にはあまりないみたいだし。
 アニメに関しては、大人になってからもう一度見返す機会がありました。ネロの救い道をじっくりと一つ一つ潰していく展開に、やりきれなくなった覚えがあります。カルピスの当時の社長がキリスト教信者で、布教の意味合いもあった、ってのは目から鱗!でした。
 主題歌の裏話もありましたね、本当にアントワープ近郊の子供たちに唄って貰ったんだとか。ええ、私もあのパート歌えますよ、カラオケで歌うと爆笑必至です(笑)。
 アメリカ映画でハッピーエンドになったのは、全然疑問に思いませんでしたけど。そりゃそうでしょうよ、人魚姫をハッピーエンドにするお国柄なんですから。

 

みとりねこ 有川ひろ著 講談社 2021年

 猫にまつわる短編集。

 ハチジカン ~旅猫リポート外伝~
 サトルとコーちゃんに拾われたブチの仔猫は、サトルの家の飼い猫になった。ハチと名付けられたちょっと鈍くさい彼を、「おっとりしてる」と評したサトル。大騒ぎして修学旅行に出かけている間に、お父さんお母さんが交通事故にあって死んでしまった。サトルと別れ、遠縁の家に引き取られたハチは、その家の末っ子ツトムとサトルを混同するようになる。改めてサトルを思い出したのは、サトルがツトムの家に、ハチに会いにやってくると聞いた時だった。

 こぼれたび ~旅猫リポート外伝~
 かぎしっぽ猫のナナの引き取り手を探しに宮脇悟は神戸へ、大学時代の恩師 久保田を訪ねて来た。当時、闘病中の妻を抱え、目端の利く悟に子供の面倒を見て貰っていた久保田。その頃起きた悟との行き違いを今も気にしていたが、悟は屈託なく話しかけてきてくれた。

 猫の島
 『アンマーとぼくら』番外編。
 父と、父の再婚相手「晴子さん」と『猫の島』竹富島に来た「ぼく」。泊まった民家の庭先を、片目の不自由なおばあさんが覗き込んで来た。どうやら以前、父と晴子さんと関りがあったらしい。

 トムめ
 午前三時におやつをねだるトムとの攻防。

 シュレーディンガーの猫
 生活能力のまるでない漫画家ツクダケイスケと結婚した佃香里。里帰り出産して帰宅すると、夫は子猫を拾っていた。夫に赤ちゃん、この上猫の面倒まで見てられない。激怒する香里だが、子猫の世話は夫に予想外の効果をもたらす。

 粉飾決算
 実家で飼っていた猫は、父にだけ懐いた。勝手気ままで自分のブームで動く父、巻き込まれる妻や子供はたまったものではない。口も悪く、「人の心がない」とは次女の弁、何かしてあげてもとにかく甲斐がない。だが猫にだけは懐かれた。

 みとりねこ
 次男の浩美が産まれた後に来た猫だから、浩太と名付けた。でも浩太としては浩美は弟分、ずっと小さいままだし俺が面倒見てやっていた。「寿命」に怯える浩美のために、猫又になるべく23年も生きた。あとは申請のための書類を待つだけだ。…

 描き下ろし漫画 ねこ着地のしかた(ツクダケイスケ著)付

 『猫の島』だけは読んだことありました、アンソロジーに収録されてましたっけ。
 しかし、ずるい。これはずるい。泣いちゃうじゃないか。
 猫がこんなに忠義だとは思わないんですけどね、サトルを思い出したハチとか捺印の練習する浩太とか、どうしても来る別れにじわじわ泣きました。
 ただ、『粉飾決算』はどうも駄目でしたね。というのはこの「自分のお父さんやったら絶対イヤ」なタイプに、うちの父もそこそこ当てはまるので。どうも微笑ましく見ていられなくて、本当、登場人物の皆さん心が広いわ(苦笑;)。
 有川さんのネーミングセンスも相変わらず、赤ちゃんの「背中スイッチ」なんてまさにそれ!って感じなのではないかしら。啓介に責任感が育まれて行く感じとか、そうか、予行練習か、と目から鱗でした。…でも結構賭けだよなぁ。
 テンポよくぐんぐん読めました。ちょっと猫好きの友人連中はどんな感想持つのか聞いてみたいかも。