読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

みとりねこ 有川ひろ著 講談社 2021年

 猫にまつわる短編集。

 ハチジカン ~旅猫リポート外伝~
 サトルとコーちゃんに拾われたブチの仔猫は、サトルの家の飼い猫になった。ハチと名付けられたちょっと鈍くさい彼を、「おっとりしてる」と評したサトル。大騒ぎして修学旅行に出かけている間に、お父さんお母さんが交通事故にあって死んでしまった。サトルと別れ、遠縁の家に引き取られたハチは、その家の末っ子ツトムとサトルを混同するようになる。改めてサトルを思い出したのは、サトルがツトムの家に、ハチに会いにやってくると聞いた時だった。

 こぼれたび ~旅猫リポート外伝~
 かぎしっぽ猫のナナの引き取り手を探しに宮脇悟は神戸へ、大学時代の恩師 久保田を訪ねて来た。当時、闘病中の妻を抱え、目端の利く悟に子供の面倒を見て貰っていた久保田。その頃起きた悟との行き違いを今も気にしていたが、悟は屈託なく話しかけてきてくれた。

 猫の島
 『アンマーとぼくら』番外編。
 父と、父の再婚相手「晴子さん」と『猫の島』竹富島に来た「ぼく」。泊まった民家の庭先を、片目の不自由なおばあさんが覗き込んで来た。どうやら以前、父と晴子さんと関りがあったらしい。

 トムめ
 午前三時におやつをねだるトムとの攻防。

 シュレーディンガーの猫
 生活能力のまるでない漫画家ツクダケイスケと結婚した佃香里。里帰り出産して帰宅すると、夫は子猫を拾っていた。夫に赤ちゃん、この上猫の面倒まで見てられない。激怒する香里だが、子猫の世話は夫に予想外の効果をもたらす。

 粉飾決算
 実家で飼っていた猫は、父にだけ懐いた。勝手気ままで自分のブームで動く父、巻き込まれる妻や子供はたまったものではない。口も悪く、「人の心がない」とは次女の弁、何かしてあげてもとにかく甲斐がない。だが猫にだけは懐かれた。

 みとりねこ
 次男の浩美が産まれた後に来た猫だから、浩太と名付けた。でも浩太としては浩美は弟分、ずっと小さいままだし俺が面倒見てやっていた。「寿命」に怯える浩美のために、猫又になるべく23年も生きた。あとは申請のための書類を待つだけだ。…

 描き下ろし漫画 ねこ着地のしかた(ツクダケイスケ著)付

 『猫の島』だけは読んだことありました、アンソロジーに収録されてましたっけ。
 しかし、ずるい。これはずるい。泣いちゃうじゃないか。
 猫がこんなに忠義だとは思わないんですけどね、サトルを思い出したハチとか捺印の練習する浩太とか、どうしても来る別れにじわじわ泣きました。
 ただ、『粉飾決算』はどうも駄目でしたね。というのはこの「自分のお父さんやったら絶対イヤ」なタイプに、うちの父もそこそこ当てはまるので。どうも微笑ましく見ていられなくて、本当、登場人物の皆さん心が広いわ(苦笑;)。
 有川さんのネーミングセンスも相変わらず、赤ちゃんの「背中スイッチ」なんてまさにそれ!って感じなのではないかしら。啓介に責任感が育まれて行く感じとか、そうか、予行練習か、と目から鱗でした。…でも結構賭けだよなぁ。
 テンポよくぐんぐん読めました。ちょっと猫好きの友人連中はどんな感想持つのか聞いてみたいかも。