読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

一ノ瀬ユウナが浮いている 乙一著 集英社 2021年

 ネタばれになってるかも、すみません;

幼馴染みの一ノ瀬ユウナが、宙に浮いている。
十七歳の時、水難事故で死んだはずのユウナは、当時の姿のまま、俺の目の前にいる。
不思議なことだが、ユウナのお気に入りの線香花火を灯すと、俺にしか見えない彼女が姿を現すのだ。
ユウナに会うため、伝えていない気持ちを抱えながら俺は何度も線香花火に火をつける。
しかし、彼女を呼び出すことができる線香花火は、だんだんと減っていく――。

乙一が映画『サマーゴースト』の姉妹作として『花火と幽霊』をモチーフに執筆したオリジナル青春小説。  (出版社HPより)

 何の予備知識もなく、「乙さん新刊出たんだ~」と予約を入れた一冊。
 驚いた。ド直球の恋愛小説。見事に泣いてしまいました。
 乙さん、上手いなぁ、切ないなぁ。ユウナの設定がいい。漫画オタクで、本気で水見式やっちゃうような女の子。心残りは少年ジャンプの続き、いずれ東京に出て漫画に携わる仕事に就きたかった、できれば漫画家になりたかった。投稿作も描いていた。電子ではなく紙に、なのが何とも泣ける。主人公の男の子もいい。特にやりたいことや目標がなく(そんな子結構いると思う)、ただユウナと一緒にいたかった。線香花火が無くなってしまった経緯には「やられた!」と思いましたし、タイムカプセルのくだりは、読んでるこちらまでページを繰る手が早くなりましたよ。彼を気遣い、支える友達も個性的で、優しくて。
 言っちゃなんだけれど、似たようなモチーフの作品は沢山あると思うんですよ。でも、切り口次第でここまで見せられる。
 同じような設定で各作家が競作したら面白そうだなぁ、と無責任に思ってしまいました。個性も、力の差も出そうだなぁ。