読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

文藝別冊 氷室冴子 没後10年記念特集 私たちが愛した永遠の青春小説作家 河出書房新社 2018年

 『クララ白書』『なんて素敵にジャパネスク』『海がきこえる』『銀の海 金の大地
 ――没後10年、愛され読み継がれる小説家・氷室冴子の軌跡と魅力に迫る、総特集!
                                        (出版社HPより)

 これは珍しく購入しました。
 ネットで発売されているのを知り、どんな内容か確認したいな、と本屋さんを訪ねたのが運の尽き(笑)。蔵書検索した棚に見当たらず、これ声かけたら後に引けなくなるな、と思いつつも思い切って店員さんに「24の棚って他にもあります?」
 「何を探してらっしゃいます?」「別の棚に置いてるんですよ」。でもなかなか見つからず、「漫画の方ですね」「絶対見つけますから」
 …最終的には二人掛かりで探して下さり、もう買うしかないじゃん、という状況に(苦笑;)。いや、いいんですけどね、面白かったから。

 ちゃんと愛情を持って作って下さってる本でした。愛しくて、一頁一頁大切に読みました。
 特に印象的だったのは、コバルト編集部の担当さんへのインタビュー。氷室さんへの敬慕の念が行間から溢れている。言葉遣いが丁寧で乱れることなく、語られたエピソードも楽しくて、編集さんに散々苦労していた氷室さんも、きっと彼女は可愛がっていたんだろうなぁ。
 近藤勝也さんへのインタビューも面白かった。ジブリ映画『耳をすませば』が『海がきこえる』に触発されて作られたなんて、全然知らなかったし。
 氷室さんの最期を看取ったお二方の話も、何しろそのうちお一人は漫画家の藤田和子さんだから、漫画『ライジング!』連載当時の話や『シンデレラ迷宮』挿絵のエピソード等々もあわせて、興味深かったです。
 エッセイでよく話題に出ていた姪っ子ちゃんのその後もちらっと出て来て、「まぁ、もうそんなになったのねぇ」とすっかり親戚のおばちゃんの気分に浸ったり(笑)。
 インタビュアーの方々が、ちゃんと氷室さんの作品をきっちり把握して質問して下さってるのも嬉しかった。

 何かね、この作家さんに関しては、やっぱり他の人と違うんですよね。心の根っこにずっと居座ってくれてる感じ。本当の最初は漫画『ライジング!』の原作者として出会って、で偶然その頃友人から『雑居時代』を貸して貰って。それからはほぼリアルタイムで作品を読み続け、丁度社会人になった頃にエッセイが出始めたんじゃなかったかな。
 で、今回思ったのは、小説作品よりもエッセイの方が、案外私の心に残ってるかもしれない、ということ。世の理不尽に怒り、原因がどこにあるか、どうしたら解決するか真剣に突き詰め、絶望に襲われながらも、かわすことができない不器用さを表現していた、あの感じ。山内直美さんへのインタビューの中で紹介されてた、「真正面からぶつからず、うまくやっていく編集部との交際方法を模索している」「仕事でオジさんたちとの付き合いとかで煮詰まったら相談に乗ります」という手紙にも通じるような。

 氷室さんご存命の頃のインタビューも掲載されていて、『銀の海 金の大地』について
  決まってます。六部全部の枠組みも、みんな。漫画の原作みたいに、要所要所のシーンと
  あらすじを合体させたのは、もう書いてあるんですよ。
 …それを出せよ!!!
 とちょっとガラ悪く思ってしまいました(苦笑;)。
 いや本当、どう展開、収束する筈だったのかは未だに知りたいんですよ。