読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

少年の名はジルベール 竹宮惠子著 小学館 2016年

 少女マンガを変えようよ マンガで革命を起こそうよ

 少女マンガの黎明期を第一線の漫画家として駆け抜けた竹宮惠子の半生記。

 石ノ森章太郎先生に憧れた郷里・徳島での少女時代。
 高校時代にマンガ家デビューし、上京した時に待っていた、出版社からの「缶詰」という極限状況。
 後に大泉サロンと呼ばれる東京都練馬区大泉のアパートで「少女マンガで革命を起こす!」と仲間と語り合った日々。
 当時、まだタブー視されていた少年同士の恋愛を見事に描ききり、現在のBL(ボーイズ・ラブ)の礎を築く大ヒット作品『風と木の詩』執筆秘話。
 そして現在、京都精華大学学長として学生たちに教えている、クリエイターが大切にすべきこととは。
 1970年代に『ファラオの墓』『地球(テラ)へ…』などベストセラーを連発した著者が、「創作するということ」を余すことなく語った必読自伝。                      
                                            (出版社HPより)


 新聞の書評で見かけて、気になったので借りました。
 奥付を見ると、出版2か月で四刷。…凄いなぁ。
 竹宮恵子作品で私がリアルタイムに読んでいたのは『イズァローン伝説』『私を月まで連れてって』、後はLaLaで不定期連載されていた『姫くん』シリーズ。でも本書はそういう比較的新しい(?)作品には触れられず、デビューからいかにして『風と木の詩』を世に送り出したか、まででした。
 当時「大泉サロン」というものがあった、ということは知っていたのですが具体的にどんなものだったかは初めて知りました。竹宮恵子萩尾望都が一緒に住んでいた、ってまぁ何て贅沢な空間!
 同年代なのに憧れの人でもある萩尾望都氏、作者を実質支えた、大泉サロン主催者でもある増山法恵氏、それに小学館の編集者Y氏。作者を含め中心人物はこの四人ですが、他にも有名どころの名前がちらちら出て来るのも嬉しい。水野英子山岸涼子佐藤史生大島弓子上原きみ子坂田靖子花郁悠紀子etc.

 氷室冴子さんがエッセイで、編集者との確執なんかを書いていたのをふと思い出しました。氷室さんの頃でまだそうだったんだから、竹宮さんの時代はよりいっそう酷かったんだろうなぁ。「売れるためにはこんな絵で、こんな話で、こんな展開で…」と押し付けられる。不満に思いながらも竹宮さんは「自分の作品に説得力がないからだ」と見据える理性も持っている。現に、萩尾作品などはボツを食らうことなく、確実に誌面に載ってファンを獲得している。
 自分が本当に描きたい話『風と木の詩』なら自信があるのに、それは編集者から許可が出ない、載せて貰えない。
 行き詰っていきながらも新しい編集者に違う視点での景色を示され、「売れること」を目指した『ファラオの墓』を成功させる。私は『ファラオの墓』は読んだことないのですが、友人から「面白い」という感想は聞いたことがあったので、これは本当に意外でした。「描きたかった話」ではなく、冷静に人気を取るための話だったとは。
 私の中では何となく、萩尾さんの方がマイナーで竹宮さんの方がメジャー、というイメージがあったんですが、反対だったんだろうか。萩尾さんの方が一般的に受け入れられて、竹宮さんの方がコアなファンに支持されていたんだろうか。
 大泉サロンの顛末等、萩尾さんからどう見えていたのか知りたいとも思いました。