読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

三鬼 三島屋変調百物語四之続  宮部みゆき著  日本経済新聞出版社  2016年

 続編。連作短編集。

第一話 迷いの旅籠
 13歳の少女 おつぎが語る。
 村に伝わる<行灯祭り>が、ご領主様の命令で中止になった。自分の子供が亡くなったので喪に服すため、という。神事をないがしろにすることに半ば怯える村人に、逗留していた旅の絵師が代案を持ち掛ける。神社のふもとに建てられた離れ屋を、行灯に見立てて飾ったらどうか、と。そこは元々、名主の隠居を住まわせた家だった。病に掛った隠居を、そこに追いやっていたのだとか。絵師が腕を振るったその家に、やがて亡者が現れ始める。ご隠居をはじめ、おつぎの兄の許嫁や、絵師を手伝っていた隣村の貫太郎の嫁や子供も。 

第二話 食客ひだる神
 仕出し屋<だるま屋>の亭主、房五郎が語る。
 三島屋御用達の弁当屋<だるま屋>は、夏場から秋にかけて、半年間店を閉めるのが習わしだという。不思議の匂いを嗅ぎ取ったおちかは、亭主の房五郎を黒白の間に誘う。
 故郷に帰って江戸にもどる途中、「餓鬼」ことひだる神に取り憑かれたこと、だがこのひだる神、食いしん坊だがその分味覚もしっかりしたもので、客を呼び寄せる福の神にもなったこと。だが店の繁盛はひだる神を太らせ、文字通り家が傾いて、ダイエットを敢行せざるをえなかったこと。だがある日、ひだる神は房五郎から消えてしまう。

第三話 三鬼
 栗山藩の江戸家老 村井清左衛門が語る。
 貧しく人心も荒れた故郷・栗山藩で、その昔、清左衛門は妹を侮辱されたことを切っ掛けに私闘を演じ、罰として洞ヶ森村の山奉行の役を命じられた。洞ヶ森村は、前領主の無謀な政策の犠牲になっているような貧しい山村で、なのに上村と下村の二つに分かれているという。前任者は「洞ヶ森村には鬼がいる」という言葉を発して逃げ帰って来たらしい。「鬼」とは何を指すのか。共に着任した須加利三郎は、清左衛門の気にし過ぎだと嗤うのだが。

第四話 おくらさま
 美仙屋の三女 お梅が語る。
 髪も薄くなったような老女が、島田を結って振り袖を着て、おちかの前に座っている。老婆はお梅と名乗り、香具屋を営む実家は、代々おくらさまが守ってくれていたのだ、と話し始めた。ある日、火事に巻き込まれた店を救うために、おくらさまは代替わりをする。選ばれたのは次女のお菊だった。話し終えると、老女の姿はかき消えてしまう。
 事の真相を明らかにしようと、怪我療養のため三島屋に帰って来ていた次男坊 富次郎や貸本屋の後継ぎ勘一も巻き込んで、おちかは「美仙屋」を探し始める。…


 う~ん、宮部さん、安定して面白い。
 特に今回、「ひだる神」は何とも微笑ましくも可愛らしくて。ひだる神が起こす症状は、これきっと低血糖のことですよね、昔の人は神様のせいにした訳だ。それだけに、唐突な別れは読んでるこっちも寂しかったです。
 おちかが仄かに思いを寄せる若先生は、縁を持って故郷に帰ることに。…とか言いながらこの先生のエピソード、あまりしっかり覚えてないんですが; 叔母さんのおちかへの台詞、
「若先生のこのご縁の不満があるのなら、大きな声でそうお言い。何もかもひっくり返すつもりで、お故郷に帰らないで下さいとせがんでごらん」
「その覚悟がないんだったら、笑顔でおめでとうございますと言うんだよ。それが女の意気地ってもんだ」
 には何だか惚れ惚れしました。…そうか、女の意気地か。
 貸本屋 瓢箪古堂の若旦那 勘一が登場、どうやらこれから彼が探偵の役を務めるようで。おちかの相手役にもなるのかな、それはちょっと雰囲気違いそうな気もするけれど。
 今回、不思議な家にいた男は出て来ませんでしたね。
 先が楽しみです。